俳優キム・ナムギル
俳優キム・ナムギル
ドラマや映画の制作発表会では、主演の俳優が作品の魅力について語るが、それだけでなく、自分の人生を思慮深く語るときもある。そういう意味では、2013年5月21日にソウルで開催されたドラマ『サメ~愛の黙示録~』の制作発表会が忘れられない。そのときのキム・ナムギルの言葉は、味わい深い知性を如実に物語っていた。

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■心の傷をどう表現するか

 キム・ナムギルは『善徳女王』のピダム役、『赤と黒』のゴヌク役で日本でも大人気になった。

 その他の作品を見ても、陰のあるキャラクターを演じることがとても多い。その点について、彼はこう語った。

「もちろん明るい役を演じてみたいですし、ロマンチックな役もこなせると思っていますが、これまで演じたキャラクターのように、幼い頃から心の傷を抱えている役に惹かれてしまいます。それぞれの役によって心の傷が違うので、それをどう表現するかいつも悩みます。また、作品ごとに違う演じ方をしなければならないので、そのあたりは苦労しますが、今はいろいろなことを考えながら役作りをしています」

 キム・ナムギルはわかっている……心の傷をどう表現するかで俳優の真価が問われるのだ、と。

 それだけに悩みが深いのだが、彼はとことん考え抜いて、役になりきっている。その姿がファンの共感を呼んでいるのだ。

■新人のような謙虚さ

 思えば、『サメ~愛の黙示録~』はキム・ナムギルが2012年7月に兵役を終えてから、最初に取り組んだ作品だった。

「除隊してから初めてのドラマ出演に緊張しています。本当に素晴らしい俳優さんたちとご一緒できることを光栄に思いながら、一生懸命演じていきたいと思います」

 まるで新人のような挨拶だ。彼の謙虚さがにじみ出ている。

『サメ~愛の黙示録~』でキム・ナムギルは、家族の復讐のために地獄から這い上がり、愛する女性にさえ刃を向ける冷酷な男を演じていた。

 彼は、演じる際の心構えをこう述べた。

「人がそれぞれ持っている痛みを表現した時、それを見る視聴者にも、そして演じる僕自身にも癒されるところがあると思います。他人の悩みや心の傷を知って、苦しいのは自分だけではないと悟るだけでも、癒される部分があるからです」

 さらに、彼は付け加えた。

「演技というのは、長くやればやるほど難しさを感じる気がします。『善徳女王』で認知度が上がり、生意気になったり初心を忘れたりしそうになりました。しかし、兵役で公益勤務をしながら、小さなことにも幸せを感じるようになりました。演技ができるだけで幸せだと思っていた最初の頃の気持ちを忘れずに、今後も生きていきたいです」

■監督も太鼓判「娘の結婚相手に最高」

 キム・ナムギルの言葉を聞いていて、心底しびれた人が多かったのではないか。

 彼ほど有名になると、初心に戻るというのは難しい。しかし、キム・ナムギルは「演技ができるだけで幸せだったデビュー当時の気持ちを忘れずに生きていきたい」と決意を述べていた。

 自分が誰のおかげで俳優を続けていられるかが本心でわかっている人なのだ。

『サメ~愛の黙示録~』のパク・チャンホン監督は、「ナムギル君は本当に面白い人なんですよ。娘が結婚するなら彼みたいな人がいいと思うぐらい、俳優としてだけでなく人間として本当にいい人なんです」と絶賛していた。

 身近で接した監督がこう言うのだから、キム・ナムギルの誠実さは折り紙付きなのである。

 制作発表会で最後にキム・ナムギルはこう挨拶した。

「今日は多くの方が関心を寄せてくださり、本当にありがとうございます。お帰りの際は気をつけてお帰りください」

 取材陣にまで気を配る心遣いを見せたキム・ナムギル。見た目と同じように、心も素敵な男性である。

文=「ロコレ」編集部

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