俳優イ・ミンホ
俳優イ・ミンホ
韓国南西部の珍島(チンド)沖で発生した旅客船「セウォル号」の沈没事故で、修学旅行中の高校生ら200人以上が安否不明の状態だ。人災的な事故原因に対する韓国大衆の怒りの的は船長から政府へ、船舶会社のオーナーへと拡大しつつある。そのなか、なぜかその標的が「修学旅行」にまでにも向けられている。

イ・ミンホ の最新ニュースまとめ

 現地のメディアやマスコミはこぞって今回の沈没事件関連のニュースを伝えており、事故現場からの生中継やリポートの他、様々な情報が錯綜している。中には、議論の余地もないつまらない詐欺劇や虚偽情報も含まれているが、賛否両論に分かれがちの歴史的、思想的な問題も取り上げられている。

 例えば、今回の事故で修学旅行中の高校生が犠牲になったことから、修学旅行、修練会など、学生の団体旅行を廃止しようとする意見だ。インターネット上では、全国の小・中・高校、数十校の保護者たちにより「修学旅行の廃止を求める署名運動」が行われており、すでに数万人の署名が集まっている。

 一見、的外れな「魔女狩り」のような署名運動に見えるが、学生らの保護者たちは、「過去にも修学旅行先での事故や暴力沙汰などの問題が指摘されたことがある。」、「事故のリスクのある現場体験を決まり事のように繰り返す必要はない。」などと主張し、この制度に疑問を投げかけている。

 専門家からは、「時代が変わり、修学旅行の教育道具としての寿命は終わった」との意見も出ている。SNSやインターネット掲示板などでは、「どれだけ多くの子どもたちが亡くなれば修学旅行を廃止するのだろうか。」、「不安といらだちが募る修学旅行に私の子を送りたくない。」などのコメントが書き込まれている。

 このような事態を受けて、一部の自治体は修学旅行を中止・再検討することを決めている。今回の事件に巻き込まれた高校を管轄していて、「韓国の神奈川県」と言われている京畿道(キョンギド)の教育庁は17日、1学期に予定していた現場体験学習の団体旅行や修学旅行を全面中止とした。
また、ソウル市の教育庁からも、市内のすべての小・中・高校に対して、「現在計画中の修学旅行や修練会で安全性に懸念がある場合は、直ちに中止せよ。」との指示が出された。

 21日には、ついに国が動いた。韓国の教育部(省)は今年8月までの第1学期の期間中には、修学旅行を禁止した。ただし、永久禁止になるのかまではまだ決まっていない。

 修学旅行の起源は、ヨーロッパのようだ。特にイギリスのグランドツアーや、旅行を大切にしたペスタロッチの教育思想にあると言われている。しかし、韓国における「修学旅行」の起源は、日本にあるようだ。つまり、修学旅行とはヨーロッパ発祥の文化が日本の文化になり、戦前の植民地向けの近代教育政策の一部として韓国に伝わった文化である。今回の騒ぎの中でも、「修学旅行は、植民地時代に持ち込まれた日本の残滓である。だから今すぐ廃止すべきだ。」という主張が目立つ。

 しかし、韓国の大衆において、修学旅行は「残滓」と言われるような筋なのか?日本も同じであるが、韓国の大衆にも修学旅行は、学生時代の思い出の代表格である。韓国民の生活、そのダイナミックな喜怒哀楽をそのまま反映している韓国のドラマにも、それが見事に表現されている。

 ペ・ヨンジュンの「冬のソナタ」やチャン・グンソクの「ラブレイン」、イ・ミンホ「相続者たち」など、日韓の人気ドラマのなかでも、修学旅行は、学生時代の主人公に多大な影響を及ぼす。「冬のソナタ」の北極星「ポラリス」の名場面も、「ラブレイン」の切ない恋歌も、「相続者たち」の今時の若者の恋や思春期の悩みも、団体旅行がなかったならばその美しい物語が成立しないほどだ。日本の「残滓」ではなく、日本の「プレゼント」としか言いようがない。

 思い出の修学旅行が、本当に韓国の風土や今の時代に合わないならば、自然に無くなるだろう。しかし、それが「日本の残滓」だから云々は、韓国社会の判断に歪みを作るだけだ。韓国民のひとりひとりが自分の生き方を大切にし、社会的にその生き方を文化として合意していく課程で、その文化がどの国から来ているのかは関係ない。その文化をどのようい使い、その結果をどのように享受できるかが重要な訳だ。

 確かに、現代の学生生活における「修学旅行」の意味はかなり薄まってきているようにも感じる。貧富の差が今よりもずっと激しかった時代、一般人の海外旅行も制限されていた時代の韓国において、「旅行」は庶民たちにとって身近なものではなかった。学生の身分や学校側の補助や団体のメリットを生かし、格安で行ける「修学旅行」は、学生時代の大きな楽しみとして生涯残る「思い出」になる時代は終わったのかもしれない。

 しかも最近は、少人数での家族旅行の文化が発達し、「集団主義より個人主義の方が望ましい」との考えが一般的になりつつある。そこで、未熟な学生たちの「団体行動」に対する疑問の声が上がっているのだ。

 なお、「団体ツアー旅行」などを好む日本人とは違い、多くの韓国人は国民性からしても「団体行動」を嫌う傾向もある。

 果たして、今回の「セウォル号」沈没事故は、韓国で半世紀以上続いてきた学生生活最大のイベントを永久廃止にまで追い込んでしまうのだろうか。韓国の大衆は「残滓」トラウマから抜けられるのか。現地世論の動きに注目してみたい。

 花盛りの時期、修学旅行の思い出を育む目前で無念にも亡くなった高校生たちの冥福を祈る。


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