EXO
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韓国最大級の総合エンタメ企業「SMエンターテインメント」(以下、SM)の年末は笑いが止まらなさそうだ。一昨年デビューした「EXO」が早くもトップアイドル仲間入りを果たし、年末の賞レースを席巻しそうな勢いを見せているからだ。先日リリースされた新曲「12月の奇跡」も各種音楽配信チャートで「1位」を独占している。

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 エンタメ業界、とりわけ音楽業界のビジネスは、「人ありき」の商売だ。その故「水商売」に喩えられることもあるが、1人のスターから得られる収益で全従業員の給料をまかなっている会社もあるほど。

 自社で発掘した新人が一度売れてくれれば、少なくとも5~6年は黒字活動を続けられるケースが多いため、会社としても大きな頼りとなる。とくに上場企業の場合、この「スター」への渇望が一段と強くなる。既存の投資家たちからは一定の信頼感を確保しつつ株価を安定させ、見込み投資家に対しては期待感と投資判断の材料を与えるからだ。

 昨今のK-POPブームで韓国のエンタメ企業も大規模化しはじめており、いわゆる「ビック3」(SM、YG、JYP)を初め、上場プロダクションの数は9社にまで増えている。

 とは言っても、9社の合計売上(2011年)は350億円程度で、日本の上場エンタメ企業(A社)の約3分1の規模にすぎない。その故、大手といえども、世界2位の規模を誇る日本を初めとする諸外国に進出することで経営を成り立たせるしかない状況。そこで「金の卵」である新人や研修生(練習生)たちへの期待度が増してくるワケだ。

 各社、様々な工夫を凝らしながら「新人育成」に注力しているが、その中でもやはり資金力のある上場エンタメ企業の戦略が目立つ。ここでは、今年SMエンターテインメントとYGエンターテインメントが試みた新人育成システムを取りあげてみよう。

 両社とも、基本コンセプトの面では日本の「EXILE」や「AKB48」が既に行っている方法も取り入れているが、全体としてみれば日本では例のない仕組みで、かなり画期的な発想に基いている。

■YGエンターテインメントの場合

 先に仕掛けたのはYGだった。今年8月に自社の新人男性アイドルグループのデビューまでの道のりに密着したバラエティー・ドキュメント番組 「WHO IS NEXT:WIN」を制作・放送し、業界内から注目を浴びた。研修生グループ同士のバトルで、最後の勝者がデビュー権を獲得する仕組みである。デビュー前のアイドルグループをコンテンツ化して、音楽専門チャンネルにおける一つの番組としてしまったのだ。

 従来の新人アイドルのデビューステージと言えば、地上波各社の音楽番組が唯一だった。そこでYGは自ら新人のデビュー・チャンネルを作り出してしまったのだ。このシステムがさらに進化を遂げれば、業界内の権力構図をも揺るがしかねない「大改革」にもなり得る。

 「WHO IS NEXT:WIN」でバトルの勝敗が決まった最後の放送は音楽専門チャンネルだけでなく、提携ケーブル・テレビのチャンネルのとポータルサイトで同時生放送された。海外でも、「channel M」や香港STAR TV系の「channel V」を通じて10カ国以上のアジア諸国で放映された他、日本でもネットで特別放送され、認知度を高めた。英語による韓流専門番組「アリランTV」を入れると世界100カ国以上の地域で放送されたことになる。

 その結果、番組で勝者となったグループ「WINNER」の人気は、デビュー前であるにもかかわらず既にトップスターのレベル。先日日本で開催された初めてのファンミーティングには8000人あまりのファンが集まる大盛況ぶりをみせた。

 まさに「電波の力」をフル活用したケースだが、コストパフォーマンスの面でも非常に優れた戦略といえる。主な出費は、番組の制作費程度で収まるからだ。大型新人の宣伝・マーケティング費用に比べれば割安なコストで、メディアへの波及効果は高い。

■SMエンターテインメントの場合

 韓国の音楽業界では常にプロンティア的な存在として様々な差別化戦略を試みてきた同社だが、今回はYGからの先制攻撃を受けた形となった。しかし、その後の巻き返しは早い。

 つい最近、「さすがイ・スマン先生」(SMの創業者で現会長)と言わしめるような、時代の流れに沿った新たな育成システムを電撃発表したのだ。

 一言でいうと、「新人育成システムをブランド化し、ファンの関心を高める」戦略。韓国におけるSMエンターテインメントは、日本のジャニーズやエイベックスのように、企業ブランドがハッキリしている会社だ。「SMからの新人」ということだけでブレイクしてしまうこともある。

 今回もそのブランド力を活かすべく、プロジェクト名は「SMROOKIES」と掲げ、デビューを控えている注目の研修生をこのブランドを通して公開していく予定だ。「SMROOKIES」のホームページはもちろん、自社のFacebook公式ページを初め、Twitter、YouTube、Instagram など、各種インターネット媒体を活用してファンにアプローチしていく。

 SNSでファンとの交流を大切にしながら、身近な存在として研修生たちの画像や動画コンテンツを提供していくのだ。宣伝目的でもあるので当然無料。
デビューが決まっている研修生たちへの評価、改善点などについての感想から、メンバーの構成、人数決定などの細部にわたってファンの意見を反映するというもの。

 前述のYGエンターテインメントや日本の大手エンタメ企業の戦略もファン参加型的な要素は持っているが、ここまで深くファンの意思を反映した「アイドル育成」はかつてない発想である。始まったばかりなのでまだ様子見の状況ではある。ファンは、自分でアイドルを育てる感覚を味わえ、研修生たちがスターになった時は大きなやり甲斐とともに熱い愛情を持つはずだ。

 これには、ただでさえ強烈な自社(SM)のブランド力を圧倒的なものに進化させていく狙いがあるとみられる。なお、「SMROOKIES」に入れなかった練習生たちは既存のやり方でデビューさせる方針だという。

 日本の「秋元康先生1人勝ち」の状況とは違い、アイドル大国になりつつある韓国では、このような大手プロダクション同士の競争が激化しているのだ。
「一発当たればアジアのスター」という認識が蔓延している韓国の芸能界においては、今後もさらなる攻防戦が続きそうだ。


「EXO」-「OVEN RADIO」
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