立ち入りが規制された梨泰院の事故現場=31日、ソウル(聯合ニュース)
立ち入りが規制された梨泰院の事故現場=31日、ソウル(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】韓国・ソウルの繁華街、梨泰院で29日夜に起きた雑踏事故で、警察が事故の原因と責任の所在解明に苦心している。 事故は梨泰院のハミルトンホテルの隣にある狭い路地で起きた。ハロウィーンイベントに押し寄せた大勢の人が折り重なるように転倒し、これまでに154人の死亡が確認された。 警察によると、事故を捜査するソウル警察庁は、人々がひしめき合う中で一部の人が前の人をわざと押した疑いがあるとみて調べている。 SNS(交流サイト)には、坂道になっているこの路地の上にいた人の一部が「押せ、押せ」と叫びながら前の人を押したという証言が寄せられている。警察は事故現場付近の防犯カメラ映像や事故当日の現場の様子を収めた動画を入手し、当時の状況を再構成している。 法曹界では、前の人を押したことで人の列が崩れ、人々がもつれ合って転倒したとすれば、過失致死あるいは過失致傷の容疑を適用できるとみている。また、前の人を押した行為そのものが暴行にあたるため、暴行致死または暴行致傷容疑の適用が可能だとの意見も一部にある。 だが、当事者の特定が難しく、特定できたとしても人を押した行為と人の列が崩れた結果の間の因果関係を立証するのは困難だとの見方もある。 一方、事故現場に居合わせた人々は、人波を抜け出して路地のクラブに避難しようとした人をクラブの警備員が阻んだと証言している。これを受け、危険に陥った人を救助せず、逆に危険な状況へ再び追いやった警備員に対する刑事処罰を訴える声が出ている。 警察も警備員らの犯罪容疑について検討中とされるが、韓国の法にはこうした行為を処罰する規定がないため、実際に法的責任を問うのは難しそうだ。 事故を予防できなかった公務員に対し、どのような刑事責任を問えるかにも関心が集まる。 事故現場となった路地は幅3.2メートルと狭く、傾斜度は10%に達するとされ、今回の事故が「人災」との主張も出ている。そのため、路地の整備の不手際などを理由に担当公務員に幅広い刑事責任を問えるとの見方もある。 だが法曹関係者らは、公務員らの違法行為が確認されたとしても、これを今回の事故と結びつけるには数々の法理上の難関があると指摘する。 弁護士の宋得範(ソン・ドゥクボム)氏は「事故が起きないよう事前に路地を整備しておくべきだったとの主張には一理あるが、その義務を果たさなかったからといって直ちに事故の結果との因果関係が認められるわけではない」と話している。
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