<W解説>北朝鮮の金正恩総書記が新型コロナ「勝利宣言」=初の感染者発表から約2か月半での収束は本当か?(画像提供:wowkorea)
<W解説>北朝鮮の金正恩総書記が新型コロナ「勝利宣言」=初の感染者発表から約2か月半での収束は本当か?(画像提供:wowkorea)
北朝鮮の朝鮮中央通信は11日、キム・ジョンウン(金正恩)総書記が新型コロナウイルスに「勝利」を宣言したと報じた。一方で金総書記の妹のヨジョン(与正)氏はウイルスの流入元は韓国だと主張し、報復を示唆した。北朝鮮は先月30日以降、コロナの感染が疑われる新規の発熱者は出ていないとしているが、感染者の集計方法など不透明な点が多く、「勝利」を宣言できるほど落ち着いた状況にあるかは不明。金総書記の指導能力を強調しつつウイルスの流入原因を韓国に向けることで結束強化を図る狙いがあるとの見方も出ている。

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 北朝鮮は今年5月12日、国内において新型コロナウイルスの感染者が発生したと明らかにした。それまで国内におけるコロナの感染者は「ゼロ」と主張し続け、真実であるか疑問視されていただけに、初めて公式に感染者が出たことを認めたことは、世界を驚かせた。当時、北朝鮮メディアは、「2020年2月から2年3か月間にわたって強固に守ってきた非常防疫戦線に穴が開く、国家最重大の非常事件が起きた」と報道。金総書記は「建国以来の大動乱」と述べたとされる。

 以来、一時、厳しい防疫体制を敷くと同時に、発熱者の数の公表も始めた。感染者数ではなく発熱者を集計しているのは、検査キットの不足で、発熱の原因をコロナと特定することが難しいためとの見方がある。一時発熱者は40万人近くになったが、5月下旬以降は減少傾向となり、7月には1000人を切った。朝鮮中央通信は先月30日、前日午後6時までの24時間にコロナの感染者とみられる新たな発熱者は確認されなかったと報じた。同通信は、感染者の発生を公表した5月12日以降、初めてのことだとし、「完全な安定局面に入った」と伝えた。また、「悪性伝染病(新型コロナ)と普通の風邪を見分けるための技術的対策が講じられている」とし、コロナの検査の正確性を高めるための研究も進められていると強調した。

 そして、同通信は11日、前日に首都・ピョンヤン(平壌)で開かれた朝鮮労働党中央委員会と内閣による全国非常防疫総括会議について報道。記事によると、会議で金総書記は「重要演説」を行い、「党中央委員会と共和国(北朝鮮)政府を代表して、領内に流入していた新型コロナウイルスを撲滅し、人民の生命と健康を保護するための最大非常防疫戦で勝利をつかんだことを宣言する」と述べた。また、これまで取ってきた最大非常防疫体系を正常防疫体系に引き下げると明らかにした。

 朝鮮労働党の機関紙、労働新聞も金総書記の「勝利宣言」を伝えた。同紙によると金総書記は「わが党と国家と人民の偉大な力をもう一度、満天下に誇示した歴史的出来事」と述べたという。

 一方、妹の与正氏もこの会議で演説し、コロナ流入の原因は韓国から風船で飛ばされる「反体制ビラ」にあると主張した。また、韓国を「世界的な保健危機を機にわが国を圧殺しようとする敵」と表現し「非常に強力な報復的対応を取る必要がある」と述べた。北朝鮮は以前からコロナウイルスの流入について、韓国の脱北者団体が大型風船で北朝鮮に飛ばした物にウイルスが付着していたと主張している。与正氏の演説に対し、韓国統一部(部は省に相当)の当局者は、「根拠のない主張を繰り返し、韓国に対して無礼で威圧的な発言をした。強い遺憾を表明する」と述べた。その上で、与正氏が報復を示唆したことに言及し「北の動向を綿密に注視し、可能性に備えていく」とした。

 また、聯合ニュースなど、複数の韓国メディアは金総書記がこれまでにコロナに感染していた可能性があると報じた。聯合ニュースによると、与正氏はこの日の演説で正恩氏について言及し、「この防疫戦争の日々、高熱の中でひどく苦しみながらも、自分が最後まで責任を負わなければならない人民たちのことを考えて一瞬たりとも横になれなかった元帥様」と述べたという。聯合は「与正氏の発言からは、正恩氏がコロナの感染が疑われる高熱を患い、治療を受けて回復したとの推測が可能だ」と指摘している。

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