文大統領が拍手の中去り、自身の望む老後を送ることに反対する国民はいない。ただ、それは残りの任期の円満な最後にかかっているといっても過言ではない。残り1週間余りの期間であっても、与えられた課題はそれほど重く厳重だという意味だ。
目の前の懸案はいわゆる「検捜完剥」(検察捜査権完全はく奪)問題だ。圧倒的多数の議席数をもつ現与党“共に民主党”(民主党)が強行しようとしているため、国会での可決を防ぐことは現実的に難しい状況だ。特に民主党は「文大統領の退任前に立法手続きを終えたい」という立場は固い。結局、拒否権を行使できる文大統領の決心だけが残っているということだ。関連法の施行による問題点と国論分裂などの後遺症を、誰よりも文大統領はよく知っているはずだ。文大統領がこれを容認すればその政治的負担のため、退任後の生活も決して安らかではいられない。合理的で常識的な判断が期待される。
退任直前である5月8日 ”釈迦誕生日”の「特別赦免」も、慎重な結論を導き出さねばならない。少しでも政治的利害による判断が作用すれば、文大統領は退任した後もその問題から自由ではいられなくなる。ただ、四面楚歌の経済状況を考慮した企業人の赦免などは、前向きに検討する必要がある。
順調で雑音のないユン・ソギョル(尹錫悦)次期政府への権力移譲も重要な課題だ。大統領の業績は光と陰があるものだ。その「光」は後任の大統領が引継ぎ発展させ、「陰」は国政運営の反面教師とすればよい。政権交代期に自身が主導した政策を次期政権が否定したからといって、過敏に反応してはならないということだ。特に文大統領の周りの人たちも、より冷静な身の振り方を願う。「言いがかりをつけるなら噛みつくぞ」というような過激な発言により次期政権に対立することは、葛藤と分裂を増幅させるだけだ。意欲的に発足する次期政府に力添えをし激励する威厳を示すことが、結局文大統領のための道である。青瓦台の門を出る瞬間まで、その責任を果たすことを願う。
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