2015年の日韓慰安婦合意により、日本政府が拠出金10億円のうち、残額の56億ウォン(約5億4200万円)の使い道が未定となっている中、韓国のチョン・ウィヨン(鄭義溶)外交部長官(外相)は21日、韓国側が提示している残高の使用案に、日本側が反対していることを明らかにした。韓国メディアが22日、伝えたことだ。

2015年12月、岸田文雄外相(現・首相)は、韓国外交部のユン・ビョンセ長官(当時)と会談し、その後の共同記者会見で慰安婦問題について「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」と表明。韓国政府が元慰安婦を支援するために設立する財団「和解・癒やし財団」に日本政府が10億円を拠出し、両国が協力していくことを確認した。

当時の会談では日韓両政府が今後、慰安婦問題をめぐって双方が非難し合うことを控えると申し合わせ、ユン外相(当時)も「両国が受け入れうる合意に達することができた。この場で交渉の妥結宣言ができることを大変うれしく思う」と述べていた。

しかし、韓国のパク・クネ(朴槿恵)大統領が弾劾され、ムン・ジェイン(文在寅)政権となり、合意を破棄しようとする動きが強まった。韓国政府は2018年11月、「和解・癒し財団」の解散を発表。女性家族部(部は省に相当)は解散理由について、当時「『被害者中心主義』の原則で、財団に対する多様な意見を集めた結果だ」と説明した。

これに対し、当時の河野太郎外相は「たとえ政権が変わったとしても、責任を持って実施されるべきであり、一方的な解散は受け入れられない」と反発。その上で「合意は国際社会からも高く評価されたもので、合意の着実な実施は、わが国はもとより国際社会に対する責務。日本は約束した措置を全て実施してきており、国際社会が韓国側による合意の実施を注視している。日本としては引き続き韓国側に日韓合意の着実な実施を求めていく」と述べた。

日本政府が同財団に拠出した10億円から、当時生存していた元慰安婦の7割以上に当たる35人が1人当たり約1億ウォンを受け取り、遺族には約2000万ウォンが支給された。しかし、財団が解散したため、支給分と財団の運営費を除いた約56億ウォンがまだ残っており、宙に浮いた状態となっている。

ハンギョレ新聞によると、チョン外相は21日に開かれた国会外交統一委員会の外交部・統一部総合国政監査で、残額の約56億ウォンの使い道について日本側に提示した案について明らかにした。

チョン外相の説明によると、韓国側は元慰安婦たちを記憶に残すための記念事業に活用する案や、男女平等基金の名目で日本政府の拠出金に代わる予算「10億円」を作り、日本に送金するなどを提示したというが、日本側は「他の目的で使ってはならない」と反対を示したという。

10億円を日本に送金する案は、返金することで日韓合意そのものを無効化し、慰安婦問題について再交渉しようとの意図がうかがえる。

チョン外相は「日本がそのお金(10億円)も受け取ろうともせず、このお金(残金の56億ウォン)も絶対に他のものに使ってはならないと言う」と不満をにじませた上で、「この問題を解決するため、さまざまな現実的方策を提示しており、引き続き協議している」と述べた。

また、チョン外相は「ムン・ジェイン政府は慰安婦合意を破るとは一度も言っていない。合意の枠組み内で日本を説得し続けている」と強調した。しかし、財団の解散が発表されてから間もなく3年が経とうとしているが、拠出金の残高の使用をめぐって日韓で対立していることが改めて明らかになった。

これに対して保守系の野党「国民の力」チョ・テヨン議員は「慰安婦問題が解決されていないことにはムン・ジェイン政府の『原罪』もある」と指摘した。

これに対してチョン外相は「その『原罪』は何処にあるかとすると、2015年の合意に根本的な問題がある」「被害者たちと相談せず(韓国)政府が(日本と)合意したことそのもので問題が発生した」と反論した。

このような国政監査のやり取りを見ていると、日韓の未来はまずまず暗くなる。外相の現実認識が「慰安婦合意を破るとは一度も言っていない」のレベルなら、「約束を守れ」との言葉すら虚しくなるからだ。

”被害者”または元慰安婦の「70%」が応じた日韓の合意が「原罪」ならば、執権初期に支持率「70%」を記録していたムン政権の存在自体が「原罪」となってしまう。
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