「訪日が霧散となったのは本当に残念だ。日韓首脳がいつでも会えることを願う。両国の実務交渉を引き続きしていくように」

これは、ことし7月の東京オリンピックをきっかけとした南北首脳会談が霧散となった後、青瓦台(韓国大統領府)のパク・スヒョン(朴洙賢)国民疎通首席秘書官が、韓国のラジオ番組とのインタビューで語ったムン・ジェイン(文在寅)韓国大統領の発言である。

当時 菅義偉首相も、記者たちによる “文大統領の訪日が取り消しになったこと”についての質問に「日韓関係を健全な関係へと戻すために、わが国の一貫した立場を基に韓国側と意志疎通をしたい」と答えていた。日韓首脳会談は日韓関係改善に対する文大統領の強い意志であったが、直前の日本外交官による「不適切発言」の影響で最終的に実現することはなかった。

両国首脳が会談不発の中でもその意志を示したことで今後実現の可能性は残されていたが、菅首相の突然の辞任により日韓首脳会談実現は不透明となった。歴史問題などで強硬な立場を示してきた岸田文雄氏が、後任の首相として就任することになったためである。

文大統領は岸田首相の就任後、祝電を送り「日韓両国は民主主義と市場経済という基本的価値を共有し、地理的・文化的に最も近い国として隣国らしい協力の見本を示すことができるよう疎通していくことを期待する」として、「疎通」をいう言葉を強調したが、両国の首脳は電話会談をするまでに11日もかかった。また、文大統領と岸田首相は電話会談で様々な懸案について話し合ったが、歴史問題については互いの立場の違いだけが浮き彫りとなった。

日韓関係膠着の主な要因となっている「元徴用工への賠償問題」について文大統領は「1965年の日韓請求権協定の適用範囲に対する法的解釈に違いがあることが問題だ」とし「外交的解決法を模索することが望ましい」として、当局間の疎通強化を提案した。これに対し日本側は「1965年の日韓請求権協定により、元徴用工への賠償問題は終結した」と主張しているが、韓国の裁判所は「この協定により個人の請求権まで消滅されることはない」として日本企業の賠償責任を認めた。慰安婦問題においても文大統領は「元慰安婦の方々が納得しながらも、外交関係に支障をまねかない解決策を模索することが何よりも重要だ」と強調した。しかし岸田首相は電話会談後、総理官邸で記者たちに「(徴用工問題と慰安婦問題について)日本の一貫した立場に基づいて韓国側に適切な対応を強く要求する」と語っている。

首脳会談についても両首脳の立場の違いが浮き彫りとなった。文大統領は「岸田首相と幾度も疎通できるようになることを望み、直接会って両国関係の発展方向について腹を割って意見を交換することができることを期待する」と語ったが、岸田首相は「日韓間の意思疎通は確実に続けていかなければならない」としながらも「対面による首脳会談は、今のところ何も決まっていない」と語った。

青瓦台の内部でも「現在のような流れが続くならば、文大統領の任期内における日韓首脳会談の実現は困難だ」と言う雰囲気である。

文大統領と岸田首相は、今月27日に開かれる “ASEAN+3サミット”でオンラインにより初対面をする可能性が高いが、「多国間会談」であるため日韓の懸案についての話し合いが行われる可能性は低い。

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