(画像提供:wowkorea)
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韓国初の純国産ロケット「ヌリ号」が21日、南部のチョルラナムド(全羅南道)コフン(高興)のナロ(羅老)宇宙センターから打ち上げられた。ロケットは16分ほどで高度700キロに到達し、その後、衛星の分離までは成功したものの、予定していた軌道に衛星を投入することには失敗した。

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ヌリは韓国の宇宙開発の史上初めて、設計から、製造、試験、打ち上げまで全過程を韓国の独自技術によって行われたと言われている。2010年に開発が始まり、1兆9572億ウォン(約1800億円)の予算を投入した。1.5トン級の実用衛星を地球から600~800キロの軌道に乗せることができる3段式ロケットで、全長47.2メートル、重量は200トン。「ヌリ」のロケット名は韓国の古語で「世界」の意味を持つ。

開発には韓国航空宇宙産業(KAI)や韓国の財閥企業ハンファ(韓火:韓国火薬)グループの航空宇宙産業会社ハンファ・エアロスペースなど、国内約300社から約500人が携わった。設計と製作はKAIが、エンジンはハンファ・エアロスペースが担った。一方、韓国財閥ハンファ(韓国火薬)とは日本の半島統治時代に火薬関連事業を独占していた「朝鮮火薬共販株式会社」の職員が、終戦後に米軍政から同社の払下げを受けて誕生した会社だ。

韓国の宇宙開発をめぐっては、ロシアと合同で開発した2段式ロケット「ナロ号」が2009年と2010年、2013年の3回、打ち上げられた。09年と10年は失敗。10年には打ち上げ2分後に空中爆発し、韓国とロシアの間で非難合戦も起きていた。

2013年にはようやく成功し、当時、韓国政府は「自国の打ち上げ場で、自国のロケットを使って自国の人工衛星を軌道に乗せた国となった」と誇張したが、実際は1段目のエンジンがロシア製だった。

それだけに、「K-ロケット」と言われる純国産「ヌリ」の打ち上げは韓国にとって悲願だった。韓国メディアは打ち上げ前から関連ニュースを大々的に報じ、「宇宙ロケットの独自技術という観点から、韓国の宇宙科学史に残る瞬間だ」(中央日報)、「打ち上げに成功すれば、韓国の宇宙開発の大きな節目となる」(聯合ニュース)などと伝え、期待感を高めていた。

1トン以上の人工衛星の打ち上げ能力を保有しているのは、これまで日本や米国、中国、ロシアなど6か国・地域で、韓国が今回成功を収め、7番目の国となるか注目されていた。

ヌリは21日の午後5時に打ち上げられ、約2分後に高度50キロで1段ロケットを分離、約4分30秒後には高度258キロで2段ロケットが分離された。約15分後に高度700キロで重さ1.5トンの衛星が分離され、軌道に投入されるところ、衛星が目標の速度に達せず、軌道に乗ることができなかった。

ただ、この日の飛行はロケットの性能確認が主な目的だったため、実際の衛星は搭載せず、ダミーが使われた。聯合ニュースは「ダミー衛星が目標の速度に達しなかったのは、第3段ロケットのエンジンが早く停止したため」と伝えている。

宇宙センターを訪れ、打ち上げを見守ったムン・ジェイン(文在寅)大統領は「残念ながら、目標を完全に達成することはできなかった」と述べた一方、「発射体を宇宙700キロの高度まで打ち上げることだけでも凄いことで、宇宙に近づいた」と関係者をねぎらった。

韓国は今後もヌリを足掛かりに、宇宙開発を進める考えで、この分野で先を行く同じ北東アジアの日本や中国を追う。

来年5月には「ヌリ」2号機を打ち上げる予定で、その際は本物の衛星を搭載する計画。ムン大統領は「不足していた部分を点検して補完すれば、来年5月に行われる2回目の打ち上げでは必ず完璧な成功を収められる」と期待を寄せた。

早くも韓国メディアからは、今回のヌリ打ち上げから見えた課題について考察する記事も出ている。特に衛星の軌道投入失敗の直接原因は、3段目のエンジン燃焼が予定していた521秒間より46秒早く475秒で終了したこと。その結果、衛星は秒速7.5kmの速度を得られず、軌道に乗ることに失敗し、オーストラリアの南側の海上に落ちた。

その理由の分析では「推進剤」や「酸化剤」の不足ではなく、3段タンクの中の「圧力不足」か「燃焼終了命令の誤作動」、または「加圧システムやバルブ誤作動」が原因と推定されている。

技術の問題だけなら、51年前の日本のように4回の失敗で経験を積み、いずれ成功できる。しかし、儒教社会のなごりもあり科学技術者が政治家の「序列的な格下」として利用されている韓国の社会雰囲気は、絶望的な部分がある。ヌリ号の打ち上げ現場にいたある科学技術者の告白が韓国で報道されている。

「この10年間、ヌリ号の開発で昼夜問わずの苦労が、誰かには一瞬のイベントとして思われているようで、自愧感を感じた」

ヌリ号の打ち上げの時、細心の注意を払っている宇宙センターの統制室を、イベント企画会社の職員が飛び回り、放送カメラ用の舞台が設置されることを目撃したからだ。

しかも、大統領の声明文発表の時、背後の見た目が寂しいと、イベント責任者が現場の科学技術者たちを動員し「人間屏風」のように立たせたとの報道までが出ている。このように政治が技術を圧倒する序列社会の雰囲気が改善しない限り、韓国の「宇宙立国」は遠い話となるはずだ。

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