(画像提供:wowkorea)
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韓国の労働組合組織「全国民主労働組合総連盟(民主労総)」が3日、ソウル市内で大規模なデモを行った。デモには組合員約8000人が参加。「リストラ中断せよ」、「非正規職撤廃せよ」などと書かれたプラカードを持って行進した。

同連盟は、世界的にも有数の戦闘的労働組合として知られ、韓国内で最大規模。左派・革新政党を支持する。

2016年に始まったパク・クネ(朴槿恵)前大統領の退陣を要求する「ろうそくデモ」を主導し、ムン・ジェイン(文在寅)政権誕生に大きな役割を果たした。官製デモに近い形で反日デモに参加したり、丸坊主のパフォーマンスを行ったりもした。

しかし、2019年に同連盟の委員長が逮捕されたことを受け、同連盟は「ムン政権は『労働尊重』を放棄し、『財閥尊重』と『労働弾圧』を宣言した」と批判。ムン政権との全面闘争を宣言した。以来、政権に対して批判を続けている。

韓国では現在、新型コロナウイルスの感染者がまた増加傾向にある。感染者数はしばらく300~600人台で推移していたが、今月1日の新規感染者数は826人。800人台となるのは1月6日(870人)以来。その後も2日に794人、3日に743人と高水準を推移している。キム・ブギョム(金富謙)首相は2日に開いた緊急の記者会見で「この1年半、全国民が苦痛に耐えて積み重ねてきた防疫が重大な危機に直面した」と述べ、危機感をあらわにした。

感染者はソウルなど首都圏に集中しており、1日から実施予定だった規制の緩和を首都圏では見送った。

そんな中で同連盟は、ソウル特別市(日本の「都」に相当)や防疫当局、警察の警告を無視する形でデモを強行。これには国民からは冷ややかな声が上がっている。

コロナ時代の韓国の迅速な対応は「K防疫」と呼ばれてきた。その「K防疫」には、現在の革新系左派政権に不満を露にする保守系右派勢力のデモに対する弾圧に近い対応が含まれる。

昨年10月には、ムン政権が警察力を使って保守系団体による反政府デモを阻止し、コロナ禍で憲法が保障する「集会の自由」を制限することの是非をめぐって議論が起きた。

この約1か月半前には保守系の宗教団体などがデモを行い、新型コロナの集団感染が発生。ムン大統領は当時「政府には国民を保護する責任がある」とし、「『集会の自由』や『表現の自由』と言って擁護してはならない」と述べている。

今回、感染が拡大傾向にある中で大規模デモが強行されたことから、再び、防疫と表現の自由をめぐる議論が起きている。

韓国紙・イーデイリーは3日、「民主労総の『不法デモ』が残した質問、防疫と表現の自由は共存可能か」との見出しで記事を掲載。革新系執権与党「共に民主党」のキム・ジンウク報道官と野党「青年正義党」のカン・ミンジン代表の相反する見解を伝えている。

キム報道官は、「コロナで困難に直面している労働者の声を代弁する民主労総の主張は十分に理解する」としながらも、「コロナが再び首都圏を中心に拡大している。コロナの大規模感染のリスクをとるわけにはいかない」と述べた。

一方でカン代表は「公平性」の問題を指摘し、「公演会場やスタジアムで許可されている人数と、デモで許可されている人数の間に差が生じている。ソウル市の場合、集会デモの人数は10人未満に制限されているのに対し、屋内会場は100人未満までが入場可能で、デパートなどでは制限がない」と批判した。

ムン政権は今年、4%以上を上回る経済成長率を確保することを目標に掲げているが、コロナ禍にあって、まだ、国民が実感できる成果は上げられていない。

そのような経済情勢の中で、声を上げようとする労働者たちの権利を保障しながら、同時に防疫を進めることは難しい課題となっている。

日韓経済の違いとして有名な法則がある。日本の労組は「不景気」に活発化し、韓国の労組は「好景気」に活発化するとのこと。日本の労組は「雇用安定」を求め、韓国の労組は「賃金上昇」を求めてきた結果だ。

日韓が共に迎えているコロナの時代、その法則に変化が起きている。日本を見つめながら成長してきた韓国経済は、「反日」を叫びながらも日本化しつつあるようだ。

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