(画像提供:wowkorea)
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日本では官僚が次官(法務省では検事総長、外務省では駐米大使等の最高位)選抜過程で退官した者を各省庁傘下の特殊法人での幹部・理事職等を経て、密接な関係を持つ業界の企業へ幹部・役員として受け入れさせる事を「天下り」と呼ぶ。

 そしてそれ故に、行政機関と業界の癒着が生まれ、業界や個別企業に有利な裁量行政の横行と税金の無駄遣いや浪費の背景となっている、と言った事は日本人であれば周知の事実だと思う。それ故に特に1990年代以降の行政改革では、「天下り」に規制をかけ、裁量行政の横行と税金の無駄遣いや浪費を防ごうと尽力して来た。

 しばしば特定の官庁では逮捕者や処分のニュースを耳にするので完璧に国民世論の支持と納得を得られるようなものでないにしても、露骨な不正や癒着は減りつつあるのも事実のようだ。

 では同じような官僚・公務員の制度を持つ韓国では如何なのだろうか。日本の半島統治時代に定着した韓国の近代官僚・公務員の制度は、日本と同じ「ルーツ」を持っているから、興味深いところがある。

 韓国もやはり日本同様、公務員・官僚の昇進や選抜過程等において退官した者を、密接な関係を持つ特殊法人や業界・企業に幹部・理事(役員)として受け入れさせる慣行はあり、これを「前官礼遇」や「落下傘(パラシュート)」と呼ぶ。

 当然、業界や個別企業に有利な裁量行政(特に公共事業や政府事業等への不公正な参入斡旋・口利き)の横行と税金の無駄遣いや浪費の背景となっていて、不正や癒着の温床として批判されてはいるが、日本ほど、逮捕や処分が徹底しているとは言い難い。

 また日本と異なるのは、官庁傘下の特殊法人や企業だけでなく、以前も指摘したかと思うが、福祉サービスが貧弱な韓国においてこうしたサービスを担う宗教団体や非営利団体も関連官庁の退官者を「前官礼遇」して受け入れると言うケースもあり、どうしても人脈やコネクションと言ったもので、行政が左右されがちなようだ。

 更に日本と異なり、韓国世論の指弾を受けているのは、上述の一般行政官の退官者よりも、判事・検事と言った司法関係者への「前官礼遇」なのだ。そして、これが昨今話題の検察改革を政治的に訴える「タマネギ女」チュ・ミエ(秋美愛)法相を始めとした現政権と、「時期大統領候補の世論調査1位」ユン・ソクヨル(尹錫悦)検察総長を始めとした検察との対立の背景にある。

 つまり判事・検事を退官した者が弁護士として弁護士事務所や企業に就職した際、もしくは独立開業した際、裁判において現役の判事や検事が判事検事経験者の弁護士側に有利な便宜を図って判決、和解勧告、裁判運営、処分等を下すと言う、謂わば違法行為を疑われても仕方のない行為を指す。

 特に刑事事件において高額な報酬の「前官礼遇」弁護士を雇えない被告は、裁判においても、また裁判前の取り調べや起訴如何の決定等において極めて不利な立場に置かれてしまうとの認識がある。
 
 故に韓国の司法は「有銭無罪、無銭有罪」(金持ちは高額な報酬で「前官礼遇」弁護士を雇って無罪・勝訴を勝ち取れるが、貧乏人はロクな弁護士を雇えず敗訴してしまう・有罪になってしまう)になりがちで、信頼出来ないものだと韓国で自嘲的に言われている。

 韓国で複数の法曹らを見て感じたのは、「~財閥顧問弁護士」兼「判事・検事」(少なくない韓国の友人も苦笑して認めざるを得なかった表現だった模様)として、裁判所や検察で勤務しているとしか思えない法曹らの実態だ。

 特に財閥企業では秘書室・企画室と言った韓流ドラマでお馴染みの企業内情報機関が司法試験合格者(判事・検事への採用者)をいち早く察知してきた。出勤初日に外車、高級ブランドのお土産セット、本人や独身の兄弟姉妹の為の(財閥一家の身内や幹部候補らとの見合い用の)釣書、場合によっては兄弟姉妹や親への内定通知書等が贈られて来て、包摂されてしまうと言う。

 昨今ではロースクール制度による法曹人口の急増もあり、流石にこうした露骨で過剰な「青田刈り」は潜んだようだ。知人の弁護士は2000年代半ばに司法試験に合格したのだが、検事に採用されてこうした待遇(特に財閥幹部候補生との結婚、玉の輿)を受けたかったと酔っ払う度に冗談めかしてこぼしていた。

 こうした日本以上に違法性、もしくは悪質度の高い「天下り」「前官礼遇」「落下傘(パラシュート)」の横行が、韓国の行政官僚以上に、司法や法曹界において生じている。このような事が韓国の司法、法の支配、法治等を歪め、国民の間で法・司法への信頼性を損なっている現状を指摘せざるを得ない。

 近年、世界10位圏の先進国に成長してきた韓国。時には”鏡”として、時には”敵”として、時には”模範解答”として日本を見つめながら成長してきた。今、日韓関係は危機を迎えているが、戦後、韓国の成長を支えてきた日本や米国からは、「中二病」や「思春期」に見えているようだ。この表現が正しいならば、少しでも早く卒業し大人になってほしい。日本に対しても同じ「ルーツ」を持つ「良き隣人」は悪くないはずだ。

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