北朝鮮の金正恩委員長=(聯合ニュース)
北朝鮮の金正恩委員長=(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】韓国の北朝鮮脱出住民(脱北者)団体が対北批判ビラを飛ばしていることを巡り、北朝鮮が連日のように韓国への報復措置を示唆し、朝鮮半島情勢を最悪の局面に追い込んでいる。建前上は最高指導者の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党委員長)を非難したビラを問題にしているが、内外の危機に対処するために内部の結束を図る手段として韓国を敵に回し攻勢をかけているのが本音との見方が出ている。 北朝鮮が韓国に不満を爆発させている背景には2019年のベトナム・ハノイでの米朝首脳会談が物別れに終わったことがあるとみられる。 金委員長としては、文大統領と3回の首脳会談を行い、信頼を築いたと判断。文大統領の助言を得て米国との非核化交渉に乗り出したが、失敗に終わり大きく失望したと思われる。文大統領の言葉を信じ、「核・経済並進路線」から「経済建設の総力集中路線」に旋回し、北西部寧辺核施設の廃棄を決断したが、 何一つ成果は出てない。その上、韓国政府は依然として、米国との同盟を重視しており、不満が積もりに積もったはずだ。 北朝鮮メディアが18年9月に平壌で開催された南北首脳会談での文大統領の発言を露骨に非難していることや、文大統領が成果として誇る南北共同連絡事務所の撤去を示唆したことなどもこれらの理由からだろう。 北朝鮮を巡る内外の情勢が最悪であることも、こうした激しい反発を呼んだ要因になっていると分析される。 トランプ米政権は11月の大統領選や新型コロナウイルスの感染拡大などで、北朝鮮との非核化交渉を後回しにしながら、むしろ北朝鮮への制裁を強めている。 米当局は先月、中国やロシアなどで25億ドル(約2700億円)以上のマネーロンダリング(資金洗浄)などを行ったとして、北朝鮮の朝鮮貿易銀行元幹部らや中国人を起訴している。対北朝鮮制裁違反の摘発では過去最大だ。 最大の友好国、中国は香港統制を強める「香港国家安全法」導入問題など国内事情に目を奪われており、北朝鮮が頼ることのできる状況ではない。 特に制裁が長期化する中、新型コロナ問題まで浮上し、食糧難で多数の餓死者が出たとされる1990年代の「苦難の行軍」が再現されるとの懸念が出ているほどだ。 生活苦は自然と住民の不満をもたらし、これは最高指導者と現体制に対する不信につながりかねない。こうした中、体制を維持し内部結束を図るためには何らかの措置が必要だったはずだ。朝鮮半島の分断体制で、これらの責任を転嫁しやすいのは韓国だっただろう。 北朝鮮は金委員長の妹、金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長が今月4日に発表した韓国の脱北者団体による北朝鮮批判ビラ散布を非難する談話を皮切りに、連日のように韓国への報復措置を示唆しながら圧力をかけ、緊張を高めている。
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