文喜相議長(コラージュ)=(聯合ニュースTV)
文喜相議長(コラージュ)=(聯合ニュースTV)
【ソウル聯合ニュース】韓国の文喜相(ムン・ヒサン)国会議長が、強制徴用問題の解決策として韓日両国の企業、政府、国民が参与する「記憶人権財団」を設立し、被害者1500人に総額3000億ウォン(約277億円)の慰謝料を支払うことを骨子とする法案を準備していることで注目を集めている。

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 文議長が今月訪日した際に構想を示したこの法案は、日本が明確に拒否しなかったことで有力な解決策として急浮上した。

 だが、現在のところ被害者らは法案におおむね反対しており、問題解決のためには補完の必要性が指摘されている。

 文議長が年内の代表発議に向け進めている「対日抗争期強制動員被害調査および国外強制動員犠牲者などの支援に関する特別法」改正案は、韓日両国の企業と国民による寄付金のほか、旧日本軍の慰安婦問題を巡る2015年末の韓日合意に基づき設立され、現在は活動を終えた「和解・癒やし財団」の残りの財源60億ウォンなどを基に記憶人権財団を設立し、強制徴用被害者と慰安婦など強制動員被害者に慰謝料を支払う内容だ。

 ナチス・ドイツによる強制労働被害者への補償に向け、ドイツ政府と企業が00年に設立した「記憶、責任、未来」(EVZ)財団をモデルにした。記憶人権財団を通じて慰謝料を支払うことで和解が成立し、日本企業の賠償責任が代理弁済されたとみなされる。

 この法案は韓国政府が6月に日本に提案した「1プラス1」(両国企業が自発的に基金をつくり慰謝料を支払う)案を発展させたものといえる。

 政府案は、慰謝料の支払い対象を韓国大法院(最高裁)が日本企業に強制徴用被害者への賠償を命じた裁判の原告のみに限定したが、文議長の案はまだ訴訟を起こしていない被害者も対象としており、法案施行から1年半以内に申請すれば審議を経て慰謝料の支払い可否が決まる。

 日本が1プラス1案に反対した背景には、最大で数十万人に上るとされる訴訟を起こしていない被害者に対する対応が盛り込まれていないという点もあった。

 だが、文議長の案も根本的な解決策になるのは難しいとの指摘もある。

 大法院判決の原告が最後まで日本企業から賠償金を受け取ることにこだわれば、財団が慰謝料の受け取りを強制することはできない。財団が発足しても、こうした被害者が1人でもいれば問題が再燃しかねない。

 

 被害者団体の反応も否定的だ。一部の被害者団体は27日午後に記者会見を開き、「文議長案」に対する立場を表明する予定だ。事前に配布された資料では文議長の案が「基本的に日本政府と企業の責任を免除し、強制動員に関する大法院判決の趣旨を否定している」との立場を示している。

 慰謝料の支払い対象に慰安婦被害者も含めたことで、被害者の同意を得ることがさらに難しくなったとの指摘もある。

 市民団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」の理事を務めるイ・ナヨン中央大教授は「国際法的に不法であり、市民の力で30年間正当性を積み重ねてきた慰安婦問題を強制動員と同一線上に扱うことはできない」と主張した。文議長の案についても「被害者であるわれわれが法を作り、加害者の日本に永遠の免罪符を与えるものだ」と批判した。

 文議長側は1500人に1人当たり約2億ウォンの慰謝料を支払うために計3000億ウォンが必要だと予想しているが、強制徴用被害者の規模が最大20万人に上るとの推計もあることから、財源が不足するとの見方もある。


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