2016年11月23日、ソウルでGSOMIAに署名する韓民求(ハン・ミング)国防部長官(当時、右)と長嶺安政・駐韓日本大使(同部提供)=(聯合ニュース)
2016年11月23日、ソウルでGSOMIAに署名する韓民求(ハン・ミング)国防部長官(当時、右)と長嶺安政・駐韓日本大使(同部提供)=(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】韓国政府は日本の輸出規制強化への対抗措置として、両国の唯一の軍事分野協定である軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄をちらつかせている。日本が韓国を「ホワイト国(輸出管理の優遇対象国)」から除外する理由として安全保障問題を挙げたため、敏感な軍事情報を交換する協定を維持することを疑問視する声が出ている。 韓国政府と与党は日本の動きを注視しながら「戦略的あいまいさ」を維持しているが、協定の更新期限(8月24日)まであとわずかとなり、近く破棄か延長かを決めるとみられる。 両国の安保対立を懸念する米国を意識し、協定の枠を維持する可能性もあるが、問題解決の突破口が開けない限り、協定を通じて軍事情報を交換することは容易ではないとの見方が出ている。◇27年の紆余曲折を経て締結 「密室処理」「売国」との非難も 協定は両国が北朝鮮の核・ミサイル情報に関する2級以下の軍事秘密を共有するための原則を盛り込んでいる。一種の手続き法で、相手国から受けた軍事秘密などを自国でも機密として保護する内容となっている。 韓国は「軍事2級秘密」「軍事3級秘密」と表示して日本に提供し、日本は「極秘」「防衛秘密」「秘」と分類した情報を韓国に提供する。 協定は1年ごとの自動延長が原則で、2回延長された。延長期限の90日前に両国どちらかが協定を破棄する意思を通告すれば終了する。 協定の歴史は30年前の1989年にさかのぼる。当時、韓国の盧泰愚(ノ・テウ)政権は北朝鮮の軍事情報取得の必要性から日本に協定の締結を提案したが、日本は大きな関心を示さなかった。李明博(イ・ミョンバク)政権に入り、協定の締結が改めて推進され、2012年6月に締結直前までいった。だが、「密室処理」との批判が噴出し頓挫した。背景には敏感な軍事情報を日本と共有することに反発する韓国国民の反日感情もあった。 再推進が決まったのはそれから4年後の16年で、北朝鮮の4回目と5回目の核実験や相次ぐ弾道ミサイル発射を受け、韓米日の安保協力が求められる時期だった。北朝鮮問題を理由に3カ国の連携を強化し、「対中封鎖網」を強めたい米国の思惑が働いたとの見方も少なくなかった。 3カ国の間では14年末に締結された情報共有協定があったが、米国は韓日両国が直接的な軍事連携体制を構築することを望んだ。 世論の強い反発の中、協定は再推進を宣言してから27日後の16年11月23日に締結された。当時は朴槿恵(パク・クネ)大統領の友人、崔順実(チェ・スンシル)氏による国政介入事件で政局が混乱していたため、「拙速交渉」「売国交渉」などとの批判が出た。 協定の署名式も非公開で行われ、報道各社のカメラマンは非公開は受け入れないとして取材を拒否した。 1945年の光復(日本による植民地支配からの解放)後、両国の初の軍事協定はこのような非正常的なプロセスを経て締結された。◇3年で26件の情報交換 効用性の評価は賛否真っ二つ 協定締結を受け、両国の北朝鮮への対応は外交から軍事分野まで拡大した。だが、協定の効用性を巡っては依然として意見が分かれる。 韓国軍当局は協定に大きな有用性があると評価する。日本から情報を得られるようになり、北朝鮮関連情報が多様化し、一層正確で豊富な情報を取得できるという。 両国が優位を持つ監視・情報能力は異なる。韓国は偵察機を利用して北朝鮮の平壌以南から軍事境界線までの軍事施設で発信される無線通信を傍受し、各種の映像情報を収集する。元高官の脱北者や中朝国境地帯に人的ネットワークも構築している。 一方、日本の対北朝鮮情報収集や分析能力は米国並みといわれる。情報収集用の衛星6基や1000キロ離れた弾道ミサイルを探知できるレーダーを搭載したイージス艦6隻、探知距離1000キロ以上の地上レーダー4基、早期警戒機17機、P3など哨戒機約110機などを保有している。 韓国国会に提出された資料によると、両国は協定締結後、これまで計26件の情報を交換した。16年に1件、17年に19件、18年に2件、今年は4件となっている。 交換する情報はそれ自体が秘密のため、どちらがどのような情報を提供したかなど具体的な内容は確認できない。 韓国は日本に対し、北朝鮮が発射したミサイルの情報を提供し、日本は北朝鮮の潜水艦基地や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)開発動向、核実験・弾道ミサイルの分析結果などを提供したと推定されている。韓国軍当局者は「相互主義に基づき、等価的な情報を交換する」と説明した。 だが、「韓国が損している」との見解を示す専門家も少なくない。日本が提供する情報は北朝鮮のミサイルへの対応との側面からは重要度が相対的に低いという。 一方、日本は北朝鮮と近い場所に各種の探知装備を置く韓国との情報共有が欠かせないとしているもようだ。北朝鮮が発射した弾道ミサイルは韓国軍のレーダーにほぼリアルタイムでとらえられるため、関連情報を迅速に受け取れば十分な迎撃時間を確保できる。◇米国は維持働きかけ 延長しても有名無実化の懸念 両国の対立が協定の破棄など安保分野まで拡大する状況を最も懸念しているのは米国だ。米国は対中包囲網とされる「アジアリバランス(再均衡)戦略」や「インド太平洋戦略」を推進し、韓米同盟を「リンチピン(要)」、日米同盟を「コーナーストーン(礎)」に例えてきた。どちらかの同盟に依存する戦略では目標の達成は難しいとの判断によるものとみられる。朝鮮半島の有事の際、在日米軍基地を経由して兵力や軍事物資を韓国に送るためにも、韓国と日本の軍事情報の共有は欠かせないとしている。 今月6日に日本を訪問したエスパー米国防長官は記者団に対し、韓国と日本の軍事情報共有について、「この情報共有が続くよう働きかけていく。これ(協定)はわれわれにとって鍵になる」と強調した。エスパー氏は9日に韓国で鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防部長官と会談する予定で、協定の維持を要請する可能性が高い。 協定は韓米日の情報協力や軍事協力に直結するため、破棄すれば米国の反発を招きかねない。 ただ、両国関係が冷え込んでいる中、協定が延長されるとしても正常の機能を発揮することは容易ではないとの見方もある。韓国の政府当局者は「必ずしも延長期限内に延長の可否を決める必要はなさそうだ」として、「1年延長されてもこのような状況では正常な情報交流は行えない」と述べた。
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