ソウルの聯合ニュース本社でインタビューを受ける森川さん=(聯合ニュース)
ソウルの聯合ニュース本社でインタビューを受ける森川さん=(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】横浜に知る人ぞ知る韓国料理の先生がいる。主婦の森川千佐子さん(46)が自宅のキッチンで行う1日6人限定の韓国料理教室の予約は、生徒たちから「争奪戦」と呼ばれ、募集が始まるとすぐに定員が埋まる。約9年前に開始した教室は、多いときは月20回以上に上り、これまで計1000回を超えた。最近は遠方から来る生徒の要望に応え関西などで「出張授業」を行うほか、生徒と共に韓国の食材の名産地などを回るツアーも実施。まさに韓国料理の伝道師だ。 料理研究家でもなければ、調理師免許や韓国料理の国家資格を持っているわけでもない。「家庭で手軽につくれる韓国料理を知ってほしい」と、子どもの幼稚園のママ友たちを相手に始めた教室のことをつづったブログが口コミで広がり、現在の人気につながった。 1996年に初訪韓した時の驚きが原点だ。「辛い」「焼き肉」というイメージが強かった韓国料理は想像とまったく異なり、野菜が多く、ヘルシーだった。 帰国後、そんな韓国料理のことが気になって仕方なかった。そんな時、韓国旅行情報サイトの掲示板で日本語を勉強している韓国人女性と知り合い、ソウル郊外にある女性の実家に遊びに行くほど仲良くなった。食材や味付けに徹底してこだわる女性の母の料理を食べたことで「韓国料理の優しく上品な味や素材の甘み、ゴマ油の香りなどにひかれ、自分も家でつくってみたい」と思うようになった。 そこから、料理レッスン付きの韓国ツアーや本などを参考にした独学で腕を磨き、子どもの幼稚園の行事などがある時はママ友にキムチやキンパ(韓国のり巻き)などをつくって持っていくようになった。「おいしい」という言葉とともに「私もつくってみたい」「教えて」という言われるようになり、最初はママ友相手の教室を実施。そこにブログを見て連絡をくれた生徒たちが少しずつ混じるようになった。スンドゥブ(純豆腐)やサムゲタン(参鶏湯、鶏スープの料理)、タットリタン(鶏肉と野菜の鍋料理)…。参加者のSNS(交流サイト)を見た人や、教室でつくる料理のおいしさを聞いた人などからの問い合わせが相次いだ。 授業料をもらい、先着順に6人ずつ参加してもらう現在のスタイルになったのは2009年ごろ。家庭でつくれそうだなと自分が興味を持った料理をブログに掲載し、興味を持って参加してくれた生徒が延べ5000人近くになったことが不思議だが、「日本人の主婦がする教室は、料理の専門家や本場の先生とは違う親しみのようなものがあるのかもしれない」とも思う。 遠方からの生徒も増え、「ぜひ先生の教室を地元の友達にも紹介したい」などの声も多くなった。これに応えるために、最近は出張授業も行う。大阪と広島で、自宅とできる限り近いスタイルの教室を実施した。 今年1月からは地元・神奈川の韓国綜合教育院で在日コリアンに韓国料理を教えている。最初に話を持ちかけられた時、自分が在日の人に韓国料理を教えていいのかと悩んだが、新たな境地に挑むつもりで飛び込んだ。「在日の方があまり知らない韓国ではやっている料理などを教えているが、こちらも学ぶことが多く非常に良い形でやれている」と話す。 ◇生徒との韓国巡りも励みに 昨年からは韓国現地で集合・解散する生徒限定のツアーも始めた。春と秋に1回ずつ実施しているツアーは自宅での教室で使用し、韓国料理を引き立ててくれる利川陶磁器の祭りや報恩ナツメ祭りに参加したほか、薬事法の関係でほぼ日本には入ってこない人気の果実、五味子(オミジャ)をテーマに五味子の生産地を回り、エキスづくりなどを楽しんだ。 「地域特産品の生産者や陶磁器作家と参加者とのつながりを築くとともに、互いの文化や気持ちを理解しながら食を通して心を寄せ合っていきたい」と思っている。  晩秋のこの時期は毎年、韓国各地のキムジャン(越冬用のキムチ漬け)の現場を回り、地元の人と触れ合いながら地域によって異なる薬味や材料、発酵方法などについて学んでいる。「もっと勉強して、多くの人にたくさんの地方料理を知ってもらいたい」 韓国料理の魅力はまだまだ尽きない。(張智彦)
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