非営利団体「殉教者の声」が4日、北朝鮮に向け風船を飛ばそうとしたが、警察に阻まれた(同団体提供)=(聯合ニュース)
非営利団体「殉教者の声」が4日、北朝鮮に向け風船を飛ばそうとしたが、警察に阻まれた(同団体提供)=(聯合ニュース)
【坡州、漣川聯合ニュース】韓国と北朝鮮が首脳会談を開き、板門店宣言に軍事境界線一帯でのビラ散布の中止を盛り込んでから2か月がたった。今も韓国の複数の民間団体は「表現の自由」や「宗教の自由」を主張して北朝鮮の体制を非難するビラなどを北朝鮮に向けてまく活動を続けており、これを制止しようとする政府側との間でもみ合いが起きている。 

 キリスト教の非営利団体「殉教者の声」は4日と9日、10日と、6月だけで3回、北朝鮮との境界に近い京畿道北部の漣川と仁川・江華島から風船を飛ばそうとした。だが、警察は数十人を動員して道をふさぎ、阻止した。団体側は「われわれも政府の平和協定を支持するが、自由民主主義国家で非営利団体として任務を果たしているだけ」としながら、風船で飛ばそうとしたのは北朝鮮政府が出版した聖書で、政治的な宣伝ではないと強調した。

 北朝鮮住民向けの宣伝ビラを製作、散布する北朝鮮脱出住民(脱北者)の団体の場合は、政府だけでなく、地元住民との間でもあつれきが生じている。

 板門店宣言署名後、統一部がビラ散布などの活動自粛を要請したのに対し、脱北者団体「自由北韓運動連合」は活動を継続する考えを示した。同団体は5月5日、京畿道・坡州から「事実と真実の手紙」と題するビラを飛ばそうとしたが、警察の封鎖により計画通り行事を行うことができなかった。また、地元の市民団体や住民は「軍事境界線一帯での相互誹謗(ひぼう)と敵対行為を引き起こしかねない北向けビラの散布は、甚大な危機的状況を招く」として、反対集会を開いた。

 団体はその1週間後に不意をついて、15万枚のビラと1ドル紙幣1000枚を大型風船五つにくくりつけ、坡州市内から飛ばした。同団体の朴相学(パク・サンハク)代表は「北核問題で解決されたことはまだない」としながら、政府が何と言おうと活動を続けると述べた。

 別の団体「北韓同胞直接手助け運動本部」は、統一部当局者の要請を受け入れ6月末までビラ散布の自粛を決めたが、7月からは活動を再開する構えだ。元脱北者の李民馥(イ・ミンボク)氏は「ビラ散歩は政治取引の対象でない」と強調した。

 同氏は北朝鮮でビラを見て脱北を決意したという。韓国でビラ散布活動をして警察などに制止され、国を相手取って損害賠償請求訴訟を起こしたことがある。裁判所はこの時、ビラ散布は「表現の自由」にあたると認める一方で、政府の制止も国民を保護するための措置であり、適法との判断を示した。

 李氏らが2014年10月に漣川からビラをつけた風船を飛ばした際には、北朝鮮軍が風船を目掛け発砲し、韓国軍も応射。一時、軍事的な緊張が高まった。


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