先月末、韓国・釜山に入港した米軍の原子力潜水艦「ミシガン」(資料写真)=(聯合ニュース)
先月末、韓国・釜山に入港した米軍の原子力潜水艦「ミシガン」(資料写真)=(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は、「自主国防」を旗印に軍の戦力強化を加速させる見通しだ。北朝鮮の核・ミサイル脅威に対しては、米国中心の巨大なミサイル防衛(MD)に組み込まれるよりも、独自の韓国型ミサイル防衛(KAMD)を構築することに力を入れるとみられる。◇原子力潜水艦の保有に言及 文在寅大統領は選挙戦で、自主国防の一環として韓国軍が原子力潜水艦を保有する必要性に言及し、これに向け韓米原子力協定の改定に取り組む考えを示していた。原子力潜水艦を運用するには燃料として濃縮度20%以上の高濃縮ウランが必要だが、現行の同協定ではその生産が認められていない。 韓国軍が原子力潜水艦を保有すべきだという主張が強まったきっかけは、北朝鮮が昨年8月に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を成功させたことだった。原子力潜水艦はSLBMを搭載した北朝鮮の潜水艦を長時間追跡でき、発射の兆候を捉えればすぐに撃沈させられる。SLBMを用いた北朝鮮の挑発を抑え込める戦略兵器だ。 文大統領の原子力潜水艦保有論は単なる選挙用の発言ではなく、盟友だった故盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の自主国防路線を受け継いだものとの解釈もある。盧政権は韓国軍の戦力増強に積極的に予算を投じ、同政権下での国防予算増加率は年平均8%を上回っていた。原子力潜水艦の建造も検討していたが、初期段階で計画が外部に伝わり論争が起き、白紙化した。続く李明博(イ・ミョンバク)政権と朴槿恵(パク・クネ)政権下での国防予算増加率は4~5%水準だった。 文在寅政権も盧政権と同様に軍の戦力強化に力を入れる見通しで、韓国製新兵器の開発事業に拍車がかかるとの見方も出ている。文大統領は選挙戦で「任期中に国防予算を対GDP(国内総生産)比で2.4%から2.7~2.8%に引き上げ、将来的には3%水準を目標とする」と表明していた。◇韓国型ミサイル防衛の構築加速か 文在寅政権は、北朝鮮が発射した弾道ミサイルを空中で迎撃するKAMDの構築も加速させる見通しだ。KAMDは地対空誘導弾パトリオット、中距離地対空誘導弾(M-SAM)、長距離地対空誘導弾(L-SAM)、早期警戒レーダー、イージス艦などで構成され、2020年代初めに完成予定となっている。 文大統領は選挙中、KAMDに加え、北朝鮮が弾道ミサイルを発射する兆候を探知して先制攻撃を加える「キルチェーン」を早期に戦力化すると繰り返し強調していた。文政権が海上配備型迎撃ミサイル(SM3)の導入を積極的に検討するとの見方もある。 ただ、米国は自国が主導する広範囲なミサイル防衛に韓国が加わることを望んでおり、独自のKAMDとどう調和をなすかが関心を集めている。米国は北朝鮮だけでなく中国の脅威も念頭に、北東アジアで韓米日3カ国の巨大なミサイル防衛を構築する考えで、韓国政府がKAMD構築という方針を維持できるかどうか疑問もある。 自国の防衛において米国への依存度を下げようとする文政権の自主国防路線は、米国の同盟国防衛負担の軽減を望むトランプ米政権の思惑とも一致するとの指摘も聞かれる。 トランプ政権は米国の防衛負担を減らすため、北大西洋条約機構(NATO)に対し独自の防衛力を強化するよう求め、国防予算の増額を要求している。また、同盟国に米軍駐留経費の負担増を強く求めており、文政権は来年本格的に始まる在韓米軍の駐留経費分担交渉に綿密な準備で臨む必要がありそうだ。
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