【ソウル聯合ニュース】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キム・ジョンナム)氏が先月13日にマレーシアの空港で殺害された事件が、発生から1カ月半にして大詰めを迎えつつあるようだ。マレーシアと北朝鮮の当局が事件収束に向けた交渉で折衷案を見いだし、正男氏の遺体が近く北朝鮮に引き渡されるという報道が相次いでいる。現地メディアによる報道の骨子は、マレーシア政府が北朝鮮内にとどめ置かれている自国民9人を全員帰国させる条件で、遺体を北朝鮮に渡し、出国を禁じている北朝鮮国籍の容疑者や重要参考人3人の出国も保障することにしたというものだ。 北朝鮮は、3人が身を潜めているとされる現地の北朝鮮大使館へのマレーシア警察の立ち入りを拒み続けていたが、26日に突然、立ち入りを認めた。両国間の交渉で何らかの合意があったとの見方が出ている。 交渉結果に関するマレーシア当局からの正式な発表がないため、情報は錯綜(さくそう)している。現地メディアは、遺体を火葬してから遺骨を北朝鮮に渡すことにした、遺体は一度クアラルンプール国際空港に移されたものの元の霊安室に戻された、などと伝えている。このため、北朝鮮とマレーシアの交渉が終盤で難航し、引き渡しが中断されたという見方が有力になっている。 マレーシアのスブラマニアム保健相は28日の記者会見で、「遺体はクアラルンプールの病院に安置されている。完全な解決策が導出されるまで保管する」と述べた。遺体の取り扱いを協議する遺族はまだ現れていないとも伝えた。 北朝鮮は事件発生直後から、遺体の引き渡しを強く要求していた。だがマレーシアは、北朝鮮に渡さないという原則を示し、事件の背後に北朝鮮がいるとの捜査結果を発表した。さらに北朝鮮人の査証(ビザ)なし渡航を停止し、自国に駐在していた北朝鮮大使を国外追放処分にすると、北朝鮮は北朝鮮内に滞在するマレーシア人の出国を禁止した。これを受け、マレーシアも自国内の北朝鮮人の出国を禁止する対抗措置を取った。両国の関係は一時、国交断絶寸前まで悪化した。 さまざまな状況を踏まえると、正男氏の遺体は北朝鮮に引き渡される可能性が高そうだ。遺族が今なお現れていない上、北朝鮮に足止めされている自国民を保護せねばならないマレーシア当局の立場も分からないではない。だが、遺体を北朝鮮に渡せば、結果として北朝鮮の「人質外交」に屈したことになる。国際的にまた一つ悪い前例を残すことになり、遺憾に思わざるを得ない。 マレーシア当局は間接的にであれ、正男氏の直系家族から遺体の引き取りを辞退する意向を確認すべきだ。そうしてから遺体を北朝鮮に引き渡しても遅くはないはずだ。人道主義の原則を尊重する政府なら、少なくともそれくらいはしてほしい。
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