【ソウル聯合ニュース】韓国で28日、これまでの検定制から国定に変更する歴史教科書の内容が公開された。歴史教科書の国定化は朴槿恵(パク・クネ)政権が掲げる重点国政課題の一つだ。非公表だった執筆陣31人の名前も明らかにされた。李俊植(イ・ジュンシク)社会副首相兼教育部長官はこの日、中学校の歴史1・2、高校の韓国史教科書、計3種の見本を公開しながら、「生徒が特定の理念に偏らずバランスのとれた歴史観と正しい国家観を持てるよう心血を注いだ」と説明した。教育部は12月23日まで世論を集約した上で、国定歴史教科書を教育現場に導入する方策を決めて発表する。 教育部は当初、来年の新学期から全国のすべての中学校と高校で新しい歴史教科書を使用する方針だったが、朴大統領と親友の崔順実(チェ・スンシル)被告の一連の疑惑を受け国定教科書に反発する世論が強まっていることから、慎重に決定するとの姿勢に転じた。李副首相は28日の記者会見で「現場で混乱なく歴史教育がなされるようにすること」が重要だとしながら、そのための方策を模索中だと説明した。しかし、今の政局を考えると、来春から国定教科書を教育現場で用いる計画は事実上白紙に戻ったと見なすべきだろう。国定教科書の導入を強力に推し進めてきた朴大統領のリーダーシップが完全に崩壊しており、反対する世論を押し切る力がないためだ。 公開された国定教科書は、現代史で韓国建国の過程の正当性を強調し、北朝鮮を否定的に記述した部分を大幅に増やしたことが特徴とされた。現行の検定教科書は北朝鮮に寛大な記述をするなど左寄りだったというのが、国定化推進の重要な論拠だった。しかし今回の国定教科書は、従来の「大韓民国政府樹立」という表現を「大韓民国樹立」に変えるなど、ニューライト系学者の視点が反映されたと評される。結果的に、右寄りというまた新たな論争を引き起こしたと指摘される。また、国内の多くの歴史学者が執筆への参加を拒否したために、公表された執筆陣の顔ぶれは多様性に欠け、政府色が強いという指摘を避けるのは難しそうだ。今月24日に裁判所は教育部が国定教科書の執筆基準を公開しないのは不当だとの判断を示した。国定教科書は手順としての正当性まで失ったことになる。 もとより教科書の国定化をめぐっては、歴史の解釈が特定政権の専有物に転落しかねないという批判と、自由な発行制度を採択する世界的な流れにも逆行するとして反対世論が大きかった。もちろん、既存の検定教科書に対し史実の歪曲(わいきょく)と左への偏向を指摘する声があったのも事実だ。だが、意見が食い違うこともある歴史問題を政府が一つの教科書にまとめてしまうなら、革新なり保守なり政権が変わるたびに歴史の記述が変わり得るのは自明のことだ。 最近、崔被告をめぐる疑惑で、国内はただでさえ混乱している。国定教科書の導入強行がまたも国論分裂をあおることになるのは明らかだ。教育部は十分に世論を取りまとめる方針だとするが、今の世論はすでに国定教科書を廃棄したも同然だ。右寄りの韓国教員団体総連合会もこの日、国定教科書に反対する立場を表明した。多様な見方が存在する歴史教科書の問題は、教育現場の選択の幅を広げる方向に進むのが正しいとみる。そうした意味で国定と検定の教科書の混用を認めることも検討する価値がある。
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