トランプ氏の当選を報じるニュース番組=(AP=聯合ニュース)
トランプ氏の当選を報じるニュース番組=(AP=聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】米大統領選挙で共和党候補のドナルド・トランプ氏の当選が決まったことを受け、韓国の専門家はトランプ新政権が北東アジア地域内での米国の役割を縮小していくのではないかという見通しを示した。 特に、トランプ氏は同盟国の負担増を強調してきただけに、政権発足後は韓国の在韓米軍駐留経費負担(思いやり予算)の増額に踏み込む可能性があると予想した。 専門家はトランプ政権が外交安保分野の要人の人選を進める間に米国側との接触を増やし、韓国の立場を積極的に説明する必要があると提言した。 以下、外交専門家の見通しと提言。◇韓国国立外交院のキム・ヒョンウク教授 トランプ氏は同盟関係を経済的な観点から見ているため、同盟国の負担を増やそうとするだろう。 おそらく、アジア地域内での米国の存在感は弱まる。同盟国に対する安全保障支援も少なくなる可能性がある。 そうなれば、韓国や日本が感じる安全保障上の不安は高まる。米国の存在感が弱まり中国の覇権が強まれば韓国と日本は独自に安保強化を図る可能性がある。 これに伴い、域内の秩序が不安定になる。トランプ氏の北朝鮮政策はまだまとまっていないだろう。ひとまず、対話は可能だとしながら中国を経済的に圧迫して北朝鮮を改革させると言うが、そうした姿勢は現在の共和党や民主党の政策と大きく変わらない。 経済的には孤立主義、保護貿易に進みグローバル経済に悪影響を与える恐れがある。世界的に景気低迷が続く可能性がある。 トランプ氏は政治経験がないため政策点検期間が半年以上と長くなるだろう。 その期間に韓国政府が政策的なフィードバックを働きかける必要がある。 トランプ政権は対外政策、アジア政策がまとまらない状態でスタートを切る側面があるため韓国がいかにフィードバックを行うかによって政策のあり方が変わる。政府レベルのタスクフォースを立ち上げる方法もあるだろう。 ◇韓東大のパク・ウォンゴン教授(国際関係学) 今後、韓米同盟が否定的な方向に進むのではないかと懸念している。ひとまず、韓国と日本の核武装容認まではいかないだろうが、在韓米軍駐留経費負担の増額問題や責任分担問題がたびたび言及されるだろう。すぐに負担を増やすよう迫ってくることもあり得るが、重要なのは駐留経費負担の問題が政治的な問題になるという点だ。そうなれば、韓米同盟自体が揺らぎかねない。トランプ氏は北朝鮮の核問題についても金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と対話、中国には圧力をと話しているが、どれだけ真剣に考えた政策か疑問だ。直接対話に言及したが、「金党委員長のような指導者の扱い方は知っている」と言いたいだけのようだ。トランプ氏が努力してもうまくいかなかった場合、北朝鮮に対する関心を失ってしまうかもしれない。事実上、放置することになるが、そうなれば北朝鮮問題は非常に深刻な展開を迎える。トランプ氏の論理を説明する理論として「域外均衡論」がある。簡単に言うと、米国が領内に駐留する必要はなく域外に駐留し戦争になった場合は米国の利害に応じて支援するというものだ。万が一、こうした政策が実現されれば、米国と中国の決定で朝鮮半島の運命が決まるという問題が生じる。域外均衡論は代表的な超大国論理であるためだ。同じ観点から韓米同盟における在韓米軍の役割が縮小し、北朝鮮政策の面で韓国に否定的な影響を与えることになる。韓国としてはひとまずトランプ氏を説得しなければならない。米国はシステムによって回る国であるため、米議会、特に対外政策では上院が影響力を持っている。民主党、共和党を問わずトランプ氏に賛同していない側面があるため、集中的に説得すべきだ。併せて、トランプ政権を支える外交国防分野の要人を通じ、韓米自由貿易協定(FTA)や在韓米軍駐留経費の分担の重要性を説明する努力が必要だ。 ◇統一研究院のチョン・ソンユン研究委員 トランプ氏は今後、外交安保分野の要職に誰を起用するか決めるまでに相対的に長い時間を必要とするだろう。来春にまとまれば必ず来年前半に在韓米軍駐留経費の負担増を要求してくるだろう。韓国は基本的にその要求に応じざるを得ない状況だが、それでも韓米同盟の信頼が損なわれるほどの強い要求をしてくるとは思えない。韓国が拒否した場合、トランプ氏が政治・外交的に圧力を加える手段があまりないためだ。トランプ氏が言及してきたこともあり、交渉は行われるものの適切な水準で決まる可能性が高い。来年10月ごろに開かれる予定の韓米国防当局者による定例安保協議(SCM)を見守る必要がある。韓米同盟にひびが入るきっかけになる可能性もあるため、韓国側には万全の準備が求められる。 北朝鮮政策については、外交、国際政策全般において共和党に影響を及ぼす人物を見ると対北朝鮮強硬論を主張していた顔ぶれが多い。結局、トランプ政権になっても制裁局面は引き続き強化される確率が高い。したがって、米朝関係は対話を通じた妥協の可能性は期待できない状況が展開されるとみられる。韓国はトランプ氏の外交安保専門家の人脈を見ようとするが、トランプ陣営で財務や商務を担当する人物にも注目すべきだ。彼らの役割が北朝鮮制裁や韓米FTAの再交渉にも関連してくるためだ。また、トランプ氏の言動だけを信じて韓国の核武装論を推進するのは望ましくない。韓国が核武装論を持ち出せば想像以上の政治・経済的打撃をこうむる可能性がある。トランプ氏の一言に一喜一憂し政策的関心を示したり世論に働きかけたりすることには慎重になる必要がある。
Copyright 2016(C)YONHAPNEWS. All rights reserved. 0