【ソウル聯合ニュース】1987年の民主化以降、韓国社会の統一に対する認識は大きく変わった。 南北の和解・協力の段階と過渡期である「南北連合」の段階を経て、朝鮮半島統一を実現するという「民族共同体統一案」に対する国民のコンセンサスはある程度形成されたが、情勢の変化とともに段階的で平和な手段による統一が現実的に可能なのかどうかを疑問視する声も高まっている。 北朝鮮の核問題が存在しなかった30年前と違い北朝鮮は核・ミサイルの能力を高度化させており、核を放棄する意思がないことを明らかにしている。 また、1987年当時の米国、旧ソ連を中心とした冷戦構造が崩れ、今は米国と中国を2大大国とする新冷戦の気運が朝鮮半島周辺に形成されている。 北朝鮮は5回目の核実験とミサイル開発を通じ核兵器の実戦配備を目前にしており、韓国ではこれに対抗し北朝鮮への先制攻撃論まで提起されるなど朝鮮半島の軍事的緊張は朝鮮戦争以来、最高潮に達している。 専門家は、この30年で変化した朝鮮半島情勢に伴い統一に向けたビジョンや外交戦略をあらためて建て直し、北朝鮮の急変事態の可能性に徹底して備えるべきだと指摘している。 ◇「87年体制」の産物、民族共同体統一案 韓国の公式統一方式である民族共同体統一案は「87年体制」の産物だ。 盧泰愚(ノ・テウ)大統領は政権が発足した88年の7月7日、脱冷戦の流れの中で歴史的な「民族自尊と統一繁栄のための特別宣言」(7・7宣言)を発表した。 この宣言は冷戦時代の消耗戦のような南北対決を終わらせ相互交流を積極的に推進しようとする北朝鮮への画期的な提案だった。 盧泰愚政権は1989年9月には、和解・協力、南北連合、統一国家という段階的で平和的な統一構想を盛り込んだ「韓民族共同体統一案」を打ち出した。 韓国国立外交院の尹徳敏(ユン・ドクミン)院長は「『87年体制』は冷戦後で、その当時、(韓国政府は)非常に楽観的に考えていたようだ。北は失敗した国家として(社会主義の崩壊とともに)いつか(資本主義の体制に)吸収されざるを得ないという自信があった」と指摘する。 金泳三(キム・ヨンサム)政権が「韓民族共同体統一案」の骨子を維持し補強した民族共同体統一案はその後、韓国の正式な統一案に位置づけられた。 ◇北朝鮮の核・新冷戦で統一環境が急変 圧倒的な国力を基盤に南北交流を通じ北朝鮮を改革・開放に導き平和統一を達成するという構想は、体制の存続に不安を感じた北朝鮮が核開発を本格化させたことで揺らぎはじめた。 対北朝鮮包容政策(太陽政策)を前面に押し出した金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代にも2002年10月に北朝鮮のウラン濃縮プログラム(UEP)問題が明らかになったほか、05年2月の北朝鮮の核兵器保有宣言、06年10月の1回目の核実験と、北朝鮮の核問題は南北の和解・協力の雰囲気に水を差した。 丁世鉉(チョン・セヒョン)元統一部長官は「北は今年5月の朝鮮労働党大会で事実上、核保有国であると宣言した。5回目の核実験まで成功させたため、インド、パキスタンなどの前例を踏まえると北は事実上、核保有国になったと認めざるを得ない状況になった」と話した。 朝鮮半島統一をめぐる国際情勢も30年前とは大きく変わり、朝鮮半島における米国と中国による新冷戦が激化している。 尹院長は「中国は北の非核化より体制安定を求め、また中国自体の国力が大きくなったことで、この地域で米中の競争が繰り広げられる新たな戦略環境になった」と指摘した。 国際社会の制裁にもかかわらず北朝鮮は核とミサイルの開発を進め南北関係も悪化の一途をたどっている。 今年初めに北朝鮮が4回目の核実験と事実上の長距離弾道ミサイルを発射して以降、南北交流は完全に止まっている。 北朝鮮では11年末に金正恩(キム・ジョンウン)体制が発足してから不安要素が高まっており、大規模な粛清に代表される恐怖政治やエリート層の脱北はこれを代弁している。 ◇統一に向けた新たな計画・戦略を 韓国・東国大学の高有煥(コ・ユファン)教授(北朝鮮学)は「いまは民族共同体統一案の3段階のうち(1段階目の)和解・協力の基調さえ崩れている。かつてのように段階別に進むことが事実上、難しくなったと言える」と話した。 大統領直属の統一準備委員会の委員を務める高教授は、委員会で統一憲章などの作成を目指しているが、思うように進んでいないとしながら、盧泰愚政権が民族共同体統一案を作成する際に世論を反映した上で与野党4党が合意して導き出したという点を参考にすべきだとした。 盧泰愚政権後、革新と保守の2回の政権交代を経て分断された統一をめぐる議論をあらためて深めていかなければならないというのが高教授の主張だ。 丁元長官は「民族共同体統一案の鍵は南北連合の段階だが、その段階を経ずに統一に向かうことは北の崩壊がなければ可能性としてあり得ない」と指摘。その上で、「南北連合の概念を見直す必要がある。南北連合を低い段階から高い段階に分けて徐々に進めるアプローチが必要だ」と提言した。 朝鮮半島情勢の変化に合わせ統一外交戦略も見直すべきだという声も出ている。 尹院長は「韓国の政策において一度、リセットボタンを押す時期なのではないかと思うほど外交・安保環境に画期的な変化が起こっている」として、新たな統一外交戦略を策定する必要性を強調した。 韓昇洲(ハン・スンジュ)元外務部長官は、中国は北朝鮮を負担に感じ北朝鮮の核兵器を脅威とみなす一方で、韓国主導で統一された場合、米国との同盟体制が強化されることを懸念していると説明した。 そのため、韓国は朝鮮半島統一が中国にとっても脅威となっている北朝鮮核問題解決の最善の方法であり、韓中の経済関係を発展させる方法であることを中国に説くべきだと話した。
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