【ソウル聯合ニュース】中国・北京にある北朝鮮代表部の幹部が先月下旬に家族と共に脱北し、韓国亡命の準備をしていると5日、報じられた。 この幹部は金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長とその家族専用の医療施設である平壌烽火診療所と幹部専用の南山病院、赤十字病院を担当する保健省1局の出身だという。 7月末には在英国北朝鮮大使館のテ・ヨンホ公使が韓国に亡命したばかりだ。北朝鮮エリート幹部の相次ぐ脱北は、金委員長が核兵力の強化と恐怖政治で引き締めを図っているにもかかわらず、権力層内部の亀裂が依然修復されていないことを意味しているのだろう。 北朝鮮特権層の体制離れは北朝鮮社会の暗い未来を象徴しているとも言えそうだ。金正恩体制を支えるエリート層が希望と忠誠心を失えば、内部の結束は当然緩む。 最近のエリート層の脱北が、幹部をはじめとする北朝鮮住民の「脱北ラッシュ」につながるとは断定し難い。むしろ北朝鮮当局が粛清と処刑の恐怖政治を一段と強め、国際社会に向け無謀な挑発に踏み切る公算が一層高まったとみている。 だが、亀裂が入り始めた堤防はいつ決壊してもおかしくない。韓国政府は北朝鮮社会の変化を注視し、予期せぬ万一の事態に備える必要があるだろう。朴槿恵(パク・クネ)大統領も先の式典演説で、北朝鮮住民の脱北を促す発言をする一方、「北で発生するかもしれない偶発的状況にも体系的に対応できる万全の準備を整えなければならない」と指摘した。 北朝鮮体制の不安定性が増し、一部で脱北が急増する可能性も指摘されるなか、問題は韓国社会の脱北者受け入れ態勢が整っているかどうかだ。これまでに入国した脱北者さえ、きちんとケアできずにいるとの批判が出ているのが実情だ。 韓国に入国した脱北者は今年8月末現在で計2万9688人を数える。脱北者は韓国定着のため政府からさまざまな支援を受けるが、資本主義体制に適応できずに社会から脱落するケースが少なくない。今年8月にはビルの窓ガラスの清掃をしていた元医師の40代脱北者が転落死した。脱北者を雇った企業が政府の支援金を着服するのは昨日今日始まったことではない。韓国入りした脱北者が再び第三国行きを希望することもよくある。 「脱北者3万人時代」を目前に控え、政府は脱北者政策を全般的に見直すべきだ。脱北者の全数調査を行い、定着する上での問題点を見つけて対策を取ることも検討してほしい。
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