全リンダ氏=(聯合ニュース)
全リンダ氏=(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】韓国出身の演出家で女優の全リンダ氏(39)が、19~20日にソウルの劇団「白首狂夫」の舞台で日本の作品「ワスレノコリ」の演出を務めると同時に出演する。 白首狂夫の団員にはなじみのない日本的な演出で舞台を準備中だが、聯合ニュースのインタビューに全氏は、「韓日両国の舞台で演じた経験があり、演出はさほど難しくない」と話す。何より、「この公演を機に、関西の演劇も韓国で広く紹介されれば」と意欲を示した。これまで韓国で上演された日本の作品は東京を中心とした関東の演劇が主だったためだ。 今回、劇団所属の演出家でなく、外部から演出家を迎えることで団員に新鮮な刺激を与えようとした白首狂夫から演出を依頼され、全氏はこれを快諾。彼女もまた、新たな挑戦と受け止めた。同時に、関西の演劇を知ってもらう機会になると考えたのだ。 全氏が選んだのは大阪を中心に活動する三枝希望氏作の「ワスレノコリ」。田舎のある民宿を舞台に、出稼ぎのため韓国から日本に渡った父を探しに来た娘、民宿の女主人の娘、民宿とゆかりのある姉妹、その親戚らの一晩を描く。全氏は2005年の大阪初演で、韓国人の娘役で主演した。その時のことを「演じるというより、ただ自分をさらしたといえるほど没頭した覚えがある」と振り返る。 全氏によると、韓国で主に紹介される関東の演劇は、個人主義が強く人に迷惑をかけることを嫌がり、秩序意識が強い典型的な日本人が登場する。一方、関西の演劇はこれと異なり、「韓国人特有の『情』にあふれており、より身近に感じられる」という。 韓日の演劇の違いについても語った。全氏は韓国と日本の演劇交流を推し進めようと劇団「絆」を立ち上げ、代表も務めている。 韓日では進行方法が全く異なっており、以前に両国の役者が一緒に舞台に立とうとした際は、初めは一向にまとまらなかった。だが、時間がたつと互いの長所が見えてくる。全氏は「準備が徹底した日本人のおかげで問題の発生頻度が減り、予想外の突発状況になった時には韓国式の臨機応変さが際立った」と話す。 全氏はソウル出身。大学時代に学業より演じることにのめりこみ、小劇場が集まる演劇の街、ソウル・大学路に入り浸った。しかし、1996年に役者として挫折を味わう。逃げ出すようにして日本を旅していた時に、大阪でたまたま歌舞伎を見た。せりふを聞き取れず、何を表現しているかも分からなかったが、ただ涙があふれ、「舞台こそが自分のいるべき場所」と痛感した。その足で日本語学校に登録すると、留学生活を始めた。 1997年に日本文部省(当時)の国費奨学生に選ばれ、近畿大文芸学部で演劇を専攻。大阪芸術大大学院で芸術制作と演劇舞台で修士号を取得し、さらに同大大学院で演劇舞台の博士第1号となった。 学業の合間に舞台に立ち、卒業後は演劇や映画でさまざまな役柄を演じてきた。日本では演劇で40作以上、映画でも在日韓国人や日本人役で10作以上出演した。演出も何作品か手掛けた。 ほかにも日本の地方放送局でラジオのDJ、映画祭の司会者や通訳、両国の映画・演劇のシナリオ翻訳、韓国映画での日本人役の演技指導など、活動は幅広い。関西俳優協議会の会員で、日本演出家協会唯一の外国人会員でもある。 韓国の演劇祭で出会った映画俳優チョン・マンシクさんと2013年末に結婚、翌年韓国に居を構えたが、韓日を行き来しながらの活動は続いている。 今回の「ワスレノコリ」では翻訳も手掛けた。全氏は「両国の舞台に立った経験を生かし、公演を通じ韓日交流に努める」と抱負を示す。 また、「文化が持つ伝播力には理性と論理を超える力がある。両国は政治的な葛藤(かっとう)を抱えるが、演劇では偏見無く、ただ作品性のみを突き詰める。優れた作品に良い演出と演技が加われば、観客は自然に劇場の扉をたたくものだ」と語った。 mgk1202@yna.co.kr
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