【ソウル聯合ニュース】過去2年間、外見上では安定を取り戻しているかのようにみえた北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)体制の権力基盤を揺るがす事態が起きた。故金正日(キム・ジョンイル)が死去してから2年になるのを控え、金正恩政権の「ナンバー2」として君臨してきた張成沢(チャン・ソンテク)国防委副委員長(67)の側近2人が処刑され、張氏の失脚説が提起された。
 北朝鮮は張氏の失脚について沈黙しているが、7日に再上映された記録映画では張氏の姿が全て削除され、事実上の失脚が確認された。北朝鮮の権力構造の大変動を予告する大型の突発的な変化要因といえる。
 金第1書記の叔父で後見役を務めてきた張氏は、金第1書記への権力継承後も金第1書記を補佐しながら主な人事と政策の立案を指揮した。
 張氏が金正恩政権発足後2年で失脚したということは、北朝鮮が今後、金第1書記の唯一(支配)体制の構築に総力を挙げるとの意志の表れだと評価されている。
 金第1書記は昨年4月の朝鮮労働党代表者会で最高指導者に正式に就任後、朝鮮人民軍と同党を中心とする権力基盤の構築を進めてきた。
 金正日時代の軍部の元老らを一線から退かせ、崔竜海(チェ・リョンヘ)総政治局長を除く、総参謀長、人民武力部長(韓国の国防部長官に相当)、総参謀部作戦局長、人民武力部(韓国の国防部に相当)第1副部長ら中核要員を全て若手に交代し、自身の軍部を作った。
 労働党の場合、金正日時代の元老らを中核ポストに就かせたまま、次官級を中心に視察に同行させながら新勢力構築に注力した。
 韓国の情報機関、国家情報院は金第1書記が独裁体制強化に向けた世代交代のため40~50代の幹部を登用し、党副部長級は約40人、内閣は約30人、軍団長級は約20人を交代したと把握している。
 また、国家安全保衛部長に金元弘(キム・ウォンホン)氏を、人民保安部長に自身のバスケット指導教師の崔富一(チェ・ブイル)氏を任命し、幹部や住民を監視する公安機関も整備した。
 党中央委員会全体会議、政治局会議、党中央軍事委員会拡大会議など、これまで有名無実だった党のシステムを正常化させ、主要政策を決定し、ぜい弱な指導力を補完するための国政運営体系も整えた。
 金第1書記は2年にわたり、このような過程を経て自信を付け、最高指導者としての地位を定着させ始めた。そのような自信は、ナンバー2の過度な影響力を容認せず、無謀にも張氏の失脚を決定するという結果を招いたのかもしれない。
 もはや金第1書記は張氏の影から脱し、肉親の助けを借りずに「独り立ち」をしなければならない新たな状況を迎えることとなった。
 金総書記は父親の金日成(キム・イルソン)主席を後ろ盾に体制を安定的に構築したが、金第1書記には国政運営の経験やキャリアを積んだ心強い政治的保護者がいない。張氏の妻で叔母の金慶喜(キム・ギョンヒ)党書記は持病を患っており、妹の汝貞(ヨジョン)氏は26歳と若く、張氏の空白を埋めることができないのは明らかだ。
 このため、金第1書記は唯一体制を急いで定着させるために勢力の構築を加速化させる構えだ。何よりも、40年以上にわたり北朝鮮でナンバー2として権力を行使してきた張氏の痕跡を消すために側近を処刑するなど、労働党と内閣を中心に大々的な改造を行うとみられる。
 また、張氏の側近を除去する過程で中核的な役割を果たした国家安全保衛部などを前面に押し出し、公安統治を強化することで幹部や住民の監視をさらに厳しくすると予想される。
 張氏と共に北朝鮮権力の2大軸だった崔竜海総政治局長の独走が定着すれば、崔氏の側近を中心に体制が改編される可能性もある。
 国政運営の過程で崔氏に対する金第1書記の依存度が高まる可能性が高く、その結果、崔氏の地位が向上し、過去2年間、影響力が縮小していた軍の声が強まり、先軍(軍事優先)時代に復帰する可能性もあるとの見方も出ている。
 国家情報院の南在俊(ナム・ジェジュン)院長は6日に行われた国会情報委員会の全体会議で、張氏の失脚説の余波について「金第1書記に盲従する雰囲気が形成され、崔竜海の影響力が拡大される可能性が高い。恐怖政治で(金第1書記の)権力基盤が強固になっている」との見解を示した。
 ただ、国政運営の経験が浅い金第1書記が一人の力でこのような流れを維持できるかどうかは未知数だ。
 南院長は「外見上は金正恩側の人物や金正恩体制への権力継承が完了したかのようにみえるが、不安定性も拡大したとみられる。実際には多くの副作用があると予想される」と述べた。

Copyright 2013(C)YONHAPNEWS. All rights reserved. 0