内藤正中・島根大名誉教授=(聯合ニュース)
内藤正中・島根大名誉教授=(聯合ニュース)
【湯河原聯合ニュース】「竹島(独島)は日本固有の領土だと主張する野田佳彦首相の発言は理解しがたいものです。最近の日本の学会でそんな主張をする人はほとんどいません」――。
 島根大学の内藤正中名誉教授は12日、神奈川県・湯河原で取材に応じ、野田首相の発言を批判した。
 2年前に病を患い外部での活動ができなくなった日本最高の独島専門家の声は、力は弱かったが学者としてのプライドを強く感じさせた。
 1990年代半ばに島根大を定年退職し鳥取短期大学に移ったときに、鳥取に独島に関連するさまざまな資料があることが分かった。それまでは皆、東京の外交史料館を利用していた。「私が初めて鳥取県の資料を世の中に引っ張り出したんです」
 その資料がまさに、鳥取藩が1695年に徳川幕府の問いに対し、鬱陵島と独島は鳥取の土地ではないと回答した文書だ。徳川幕府はこれを根拠に1696年に「鬱陵島渡海禁止令」を出した。
 日本政府は今になって、当時渡海を禁止したのは鬱陵島のみで独島は除外したとして、17世紀に独島の領有権を確立したと主張している。しかし、内藤教授が提示した鳥取藩の文書を見れば、当時独島は日本の領土ではないと線引きされたのは明らかだ。
 内藤教授はその後20年間、独島は日本固有の領土ではないと主張してきた。
 2008年に外務省が出したパンフレット「竹島問題を理解するための10のポイント」に反論するために、「竹島=独島問題入門―日本外務省『竹島』批判 」を出版した。
 当時、韓国内では韓国政府ができなかったことを日本の学者が行ったと評価された。内藤教授の努力により、独島は日本固有の領土であるとの主張は日本の学界で影を潜めた。
 「日本人なのにどうして」、という質問に答えるのは簡単だった。
 鳥取藩の文書を見た以上、「学者としては良心を曲げるわけにはいかない。事実は事実として明らかにする」と語った。京都大学出身の学者として良心を守ってきたプライドがうかがえる。
 一番のやりがいは、政府の主張を正面から非難したことで、「学者冥利(みょうり)に尽きる」と話す。
 しかし、内藤教授の努力がすぐに「独島は韓国の領土」という結論に結びついたわけではない。「日本の領土ではないが韓国の領土でもない、領主のいない島」という論理に結びつきかねないからだ。
 最近の日本の学界で言われているのがまさにこの論だ。内藤教授もこの点を指摘する。
 韓国が「独島は韓国領」であることを主張するためには、日本が1905年に独島を編入する前の1900年に大韓帝国が出した勅令41号の中に示されている石島が、独島だということを証明しなければならないと指摘。そうでなければ当分論争は続くと話した。
 感情的にならず、論争の争点を把握し議論を深めるのに有益な資料を探すことが求められている。
 韓国の学者に対しては、日本の学者たちと話し合うことまで避けてはならないと忠告した。相手が何を主張し、何を気にしているのかを知らなければ、説得も論争もできないというわけだ。
 学者同士で資料を広げ議論する必要があると指摘し、議論するからといって島を半分渡すようなことにはならないと話した。
 韓国人以上に真剣に独島に対し悩んできた日本人教授の助言だった。

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