【ソウル11日聯合ニュース】北朝鮮がデノミネーション(通貨呼称単位の変更)以降に離反した民心を取り戻すため、躍起になっている。
 北朝鮮は昨年11月末に100対1の比率で貨幣交換を断行したが、国定価格の公示が遅れ商店は正常な運営ができず、続く市場閉鎖措置で物価が暴騰し、住民の暮らし向きは急激に悪化した。さらに外貨使用の禁止で、中国産の財貨がほとんど途絶え、深刻な供給不足をさらに煽った。
 北朝鮮当局はこうした混乱を収拾し民心を取り戻すため、「アメとムチ」を駆使しているようだ。先ごろ市場取引と外貨使用を事実上許可したことも、これ以上の民心悪化を防ぐ「苦肉の策」とみられる。
 対北朝鮮情報筋によると、金英逸(キム・ヨンイル)首相が今月初め、平壌の人民文化宮殿で市内の人民班長数千人を集め、デノミと市場閉鎖措置の副作用を謝罪し、国定価格の運用など後続措置に忠実に従うよう呼びかけたという。 人民班長とは、当局の措置を住民に伝達する現場の「メッセンジャー」で、民心に直結しているといえる。その人民班長の前で内閣首相が頭を下げるのは、極めて異例のことだ。
 情報筋は、金首相が謝罪に立ったのは、民心が金正日(キム・ジョンイル)総書記や後継者とされる三男ジョンウン氏に責任があるという方向に流れることを事前にせき止めようという意図だろうと分析する。
 デノミと市場閉鎖を主導した朝鮮労働党の朴南基(パク・ナムギ)計画財政部長を先月中旬に解任したのも、民心を取り戻すための措置とみることができる。
 一部では、金総書記が先ごろ、咸鏡南道咸興市の2・8ビナロン連合企業所を2日連続で視察したのも、経済向上に尽力していることを誇示する「パフォーマンス」との見方も出ている。
 一方で、北朝鮮当局は融和政策だけを駆使しているのはではないようすだ。住民に恐怖心を与え統制を強化する措置も並行している。代表的な例が、8日に発表された人民保安省と国家安全保衛部という2大保安機関による共同声明だ。この声明で「反平和的な策動をつぶすため全面的な強力措置をとる」と警告し、住民統制を大幅に強化することを明らかにした。
 脱北者が運営するインターネットラジオ放送「自由北韓放送」は、咸鏡北道・穏城郡の通信員の話として「職場の党秘書が労働者らを集め、労働新聞に掲載された声明の全文を読み上げ、敵の反共和国策動に覚醒(かくせい)することを強調し、携帯電話などの所有者は自首するよう強要した」と伝えた。9日には40代の華僑男性2人が北朝鮮の内部情報を流出した疑いで処刑される事件もあったとも報じている。
 専門家らは、民心収拾のためデノミなど政策の失敗を認めても、融和政策だけでは国家の権威が弱まるとみて「恐怖政治」を並行するのが、北朝鮮の一般的な形態だと指摘している。

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