【ソウル22日聯合ニュース】金正日(キム・ジョンイル)総書記が三男のジョンウン氏を後継者に内定したと伝えられた1月から、北朝鮮は「3代権力世襲」の構築に速度を上げている。
 昨年8月に金総書記が倒れるまで、北朝鮮では権力継承準備はまったく進められていなかったと見るべきだ。66歳という年齢で、急ぎ後継者を定める理由はない。わずか半年足らずで後継者を指名したのは、やはり金総書記の健康状態が楽観できないということを証明するものと思われる。問題は、そうして急きょ後継者となったジョンウン氏に、準備がまったく整っていないという点だ。
 北朝鮮側の主張によると、ジョンウン氏は1982年生まれで、27歳とまだ若い。政治経験どころか、朝鮮労働党や内閣で公職に就いた経歴も皆無だ。その存在は一般の北朝鮮住民にはほとんど知られておらず、金総書記のごく少数の側近らを除いては権力層のなかでも認知度は極めて低いという。
 北朝鮮としては、ジョンウン氏が金総書記の唯一の後継者だと住民らに認識させなければ、故金日成(キム・イルソン)主席から3代続く世襲の名分は確保できない。金総書記が権力を受け継いだ当時のように、ジョンウン氏も「卓越した能力と資質」を備えた指導者だと、住民に刻み付ける必要がある。
 金総書記がことし、昨年より77%多い154回(12月18日現在)の公開活動を行ったのも、ジョンウン氏を同行させ、後継者授業の一環として経験を積ませると同時に、その存在を広く知らしめる意図があるという分析が有力だ。そうした流れから、北朝鮮は来年、「卓越した後継者金ジョンウン」の宣伝に総力を挙げると予想される。
 体制安定に関しては、デノミネーション(通貨呼称単位の変更)、不動産管理法など経済関連法の施行で確保した財源を住民の生活苦改善に投入し、民心を友好的なものにするとともに、米国、日本との対話の雰囲気を維持し関係改善に積極的に乗り出すものと見込まれる。
 北朝鮮がいつ、「金ジョンウン後継構図」を公のものとするかは、非常に可変的だ。「強盛大国」建設元年と定めた2012年に党大会を開き、ジョンウン氏の権力継承を公式化する計画だとも伝えられるが、金総書記の体調が突然悪化すればいつでも時期を前倒しにできると、専門家らは見ている。金総書記は現在、慢性腎不全で定期的に血液透析を受けなければならないが、遺伝的な心臓疾患のため長時間の透析には耐えられないという説も出ている。一角では、金総書記の健康が突然悪化すれば、来年の朝鮮労働党創建65周年記念日(10月10日)に合わせ、ジョンウン氏の継承を宣布する可能性もあるとの見方もある。
 ただ、「金ジョンウン後継構図」が公式のものになっても、ジョンウン氏がすぐに北朝鮮の権力機関を掌握することはないとの見方が支配的だ。金総書記も、1964年に金日成総合大学を卒業後、10年間政治経験を積み、1974年に後継者に内定。1980年にようやく、後継者の地位が対内外的に公のものとなった。また、金総書記は金主席が健在なうちに長期間かけて政治的足場を固め、公式化の時点では「後継者」の地位にふさわしい権力を確立していた。金総書記と比べると、ジョンウン氏はまだ権力者として「よちよち歩き」の状態だと見るべきだ。ある北朝鮮筋は、「この1年間、ジョンウン氏が主要政策決定の過程で強い声を上げることはあったものの、特に反映されておらず、主要人事決定にはほとんど関与できずにいると承知している」と伝える。
 こうした状況で、ジョンウン氏が後継者の地位を固めるには、おじに当たる張成沢(チャン・ソンテク)朝鮮労働党中央委員会行政部長(国防委員兼務)との関係設定が重要だとの見方が強い。
 金総書記としては息子のジョンウン氏に権力を渡すため、義弟の張部長を強力な「後見人」とし、力を与えたものと思われる。しかし、張部長が手にした権力をおとなしく明け渡すかは未知数だとの観測もなくはない。ジョンウン氏を後継者に推薦した張本人と伝えられる張部長は、金総書記の業務補佐として事実上、最高の実権を握っている。実質的な最高機関である国防委員会など権力中枢に、側近を多く送り込んでいるとされる。
 一方で、大きな政治的野望を持つジョンウン氏が、性格上、現状に満足できず、自ら勢力拡大に出る可能性もあるという説も慎重ながら出ている。
 北朝鮮問題専門家らは、ジョンウン氏が経験を積み後継者構図が公式化されても、権力継承の過程は険しく、対外的要素よりむしろ内部の権力闘争が、体制構築を大きく脅かすことになるだろうと指摘している。
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