【ソウル9日聯合ニュース】開城工業団地に入居する韓国企業のうち1社が、同団地稼働以来初めて完全撤退を決めた。残る他企業にも少なくない影響を与えるとみられる。
 最近は入居企業の撤退説がささやかれており、実際に一部生産ラインを韓国側に移転することを慎重に検討している企業もあったが、完全撤退を決めた企業が出たのは今回が初めてだ。影響がどの程度になるか予想し難いが、この撤退は開城工業団地が限界に追い込まれていることを如実に示した事例だと、現地関係者らは口をそろえる。
 開城工業団地内の韓国企業は、北朝鮮側が昨年「12月1日措置」で陸路通行時間帯と通行人員・車両数を大幅に縮小したことで、1次打撃を受けた。ただ、当時はまだ、生産品の搬入や資材搬出など、物流上の被害程度だった。
 その後北朝鮮は、韓米合同軍事演習「キーリゾルブ」(3月9~20日)期間中、開城工業団地を往来する南北通行の遮断と解除を3回にわたり繰り返し、物流難を極大化させたうえ、有事には現地滞在者が北朝鮮に拘束されることもあり得るという「弱点」を浮き彫りにした。南北通行が遮断された間、現地駐在者らは韓国側に戻ることができず、こうした状況が、南北間で軍事的衝突が発生し北朝鮮が軍事境界線を全面遮断すれば、1000人余りに達する開城工業団地常駐者らがそのまま「被抑留者」となる可能性があることを確認させた。
 これを機に、南北関係が全面的に改善されない限り開城工業団地の未来は不透明だとの認識が急速に広がり、バイヤーの注文キャンセルなど、同団地入居企業の営業被害に直結した。
 決定打は、3月30日から72日間にわたり北朝鮮当局に抑留されている現代峨山社員の問題だ。北朝鮮は接見すら許可せず長期間にわたり同社員を拘束しており、現地駐在者らは「自分も第2の被害者になり得る」と考えるようになった。完全撤退を決めた入居企業の代表も9日、聯合ニュースの電話取材で「現代峨山社員問題が決定的だった」と話している。
 こうした状況で、開城工業団地の低迷は数値上にも明確に表れている。
 統一部によると、開城工業団地入居企業数は昨年4月の69社から今年4月現在には104社と、51%増加した。しかし、年初から4月までの入居企業の輸出総額は715万ドル(約7億円)で、前年同期(1627万ドル)に比べ56.1%減少した。生産総額も7454万ドルで、前年同期(7983万ドル)より6.6%減っている。南北合意事項の宿泊施設建設が遅延しているため、開城周辺で雇用できる人員も底を打ち、北朝鮮側労働者数も、昨年12月末からことし4月末まで3万8000人台で滞っている。2007年南北首脳会談で合意した第2段階への拡大どころか、第1段階で入居予定だった250社の半分も満たせない状態で、開城工業団地は進退両難の危機に陥っている。
 企業側が独自判断で工業団地を撤退する場合、経済協力保険の保障を受けることができないため、数十億ウォン以上を投じ単独工場を建設した企業らは「極限の状況」が訪れるまで、容易に撤退することはないとみられる。しかし、小規模投資の入居企業を中心に、さらに撤退企業が出る可能性は排除できないというのが、現地関係者の見方だ。特に、11日の南北実務会談で、北朝鮮が賃金引き上げや土地使用料の早期徴収などで無理な要求をすれば、撤退は加速すると観測筋は分析する。
 こうしたことから、11日の実務会談は、開城工業団地の存廃に関する北朝鮮側の意向が把握できる場になるとみられる。南北間の軍事・政治的緊張関係の中でも開城工業団地事業を継続していくのか、閉鎖責任を回避し入居企業に自ら事業撤退を決めさせるつもりなのか、11日に輪郭が表れると予想される。
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