崔銀姫さん=20日、ソウル(聯合ニュース)
崔銀姫さん=20日、ソウル(聯合ニュース)
【ソウル20日聯合ニュース】「金正日(キム・ジョンイル)総書記は、ほかのことはいざ知らず、映画においては非常にコミュニケーションの取れる人でした。恐ろしい存在として知られる人がなぜそんなに文化的教養を身につけ、文化を愛しているのか不思議でした」――。1978年に北朝鮮に拉致され1986年に劇的に脱出した女優の崔銀姫(チェ・ウニ)さんが先ごろ聯合ニュースとのインタビューに応じ、故申相玉(シン・サンオク)監督との出会い、女優業、拉致生活などについて語った。

身より後に拉致された申監督と17本の映画を作った。北朝鮮の映画はほとんどがイデオロギー中心で一般映画はないに等しかったが、崔さんらには素材選びなどを完全に任せてくれ、作品活動は自由に行えたと振り返る。そのため、申監督が理念を超えた芸術作品を手がけることができ、北朝鮮映画としては初めて海外に輸出もした。「帰らざる密使」では、北朝鮮映画としては初めて外国と宮中のシーンを撮った。
 崔さんは金総書記について、「文化的に情熱があり、非常に頭の切れる人」と評する。作品をすべて検閲し、舞踊を楽譜に表すほど熱心だったという。韓国映画だけでなく、1万5000本程度の外国映画を所蔵しており、1人で鑑賞しながら世界を勉強するという話も聞いた。「北朝鮮では精神的な苦痛があっただけで、芸術家として格別に礼を尽くしてもらったし、経済的にも優遇されました。それでも真の芸術作品を手がけることは困難でした」。
 申監督の3回忌を迎えた心境については、「亡くなったのがつい最近のようなのにもう3回忌とは、非常に複雑な気持ち。まだそばにいる感じ」と話した。崔さんは現在、申監督の行跡をたどる活動を行っている。
 申監督とはドキュメンタリー「コリア」で出会った。アクションシーンの途中に倒れた崔さんを申監督が抱え病院に運んだことが縁となり、一緒に暮らすようになった。
 監督と女優の関係だったがスキャンダルとして広まり、逆に2人は急接近した。「『愛している』ではなく、『一生一緒に映画を撮ろう』とプロポーズされました。申監督は芸術家、恋人としては100点でしたが、一家の大黒柱としては0点でした。すべての生活と人生を映画にささげていたので」。崔さんは申監督の関係を「光と影のような間柄」と評し、共にした思い出があまりにも多く、まとめることさえ難しいと話した。
 20年余りの結婚生活にピリオドを打ったものの、北朝鮮で再会すると「大平原で百万の大軍に会った気分」になったという。また、モスクワ国際映画祭で主演女優賞を受賞したときは自分より喜んでくれたこと、亡くなる数日前に初めて「愛している」と言ってくれたことが記憶に残っていると打ち明けた。
 女優業については、「今でも現場をリアルに記憶している」と話した。せりふなしに感情を表現しなければならなかった「離れの客とお母さん」、寒さと闘いながら撮影した「成春香」を最も愛着のある作品に挙げた。最近は映画、演劇、テレビなど区別なくすべて演技として通じる時代のようだとしながら、「わたしの人生そのものが演技だったし、演技がわたしの人生だから、演技のために進み続け、ひるまずに人生を終えられると思う」と話した。
 「今でも公演を見に行くとステージに上がりたくなる」という崔さん。演技にとどまらず、演出についても「心を奪われる作品があるなら考えてみたい」と意欲をのぞかせた。
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