貿易環境が改善を続けたら実質GNI増加率はさらに拡大したかも知れないとしながらも、輸出価格の持続的な上昇に伴う貿易条件の改善が輸出企業の価格競争力を低下させ実質GNI上昇率の拡大につながったかどうかは疑問だともした。研究所は、情報技術(IT)産業が貿易環境を悪化させ実質購買力の低下を招いたとの主張は、IT産業の輸出誘発効果を通じた生産増大と所得創出を過小評価したものだと批判した。
また、国民経済の実質購買力と個人の消費心理とが乖離(かいり)していると指摘し、原因として時差効果やマクロ経済指標が現実経済を反映したことなど複合的な要因を挙げた。さらに、高い住宅価格と個人借金の増加率、雇用や老後に対する不安、企業の採算性悪化、労使問題などは時差をおいてマクロ経済指標に反映されるため、現在の経済政策指標としてのマクロ経済指標は適時性を欠いているとの見方を示した。
研究所は、経済政策的な関心を貿易環境関連の論争から国内消費の活性化や新成長エンジンの発掘、国際原油価格に左右されない国民経済などに移す必要があるとしている。
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