「高麗人参を食べて長生きしてください」――。南北離散家族面会行事2日目となる29日、北朝鮮拉致被害者の金英男(キム・ヨンナム)さんは、母親の崔桂月(チェ・ゲウォル)さんに28年間出来なかった親孝行をしようと、北朝鮮式の80歳の祝い膳を準備した。
 英男さんは「息子のために苦労が多かったでしょう。60歳も70歳も祝うことが出来なかったので、80歳のお祝いを準備しました。気に入ってもらえるかどうか」と、崔さんに酒を注いだ。80歳と言わず90歳、100歳までお元気でいてくださいとの言葉に、笑顔だった崔さんは感情を抑えきれずに涙を流した。

 家族で記念写真を撮ったあと、英男さんは崔さんに90年ものの高麗人参を贈った。「健康になって欲しいと私が準備したものです。これを食べてきっと長生きしてください」と声をかけると、崔さんは涙を流しながらうなずいた。このほか絹織物を「気に入るか分からないけど」と手渡すと、夫人のパク・チュンファさんが「服に仕立てて着てください」と声をかけた。日本人拉致被害者の横田めぐみさんとの娘とされるヘギョンさんと、チュンファさんとの息子チョルボンくんからは、高麗青磁の技法で作られた陶器のセットが贈られた。英男さんが「お母さん、膳は気に入ってもらえましたか?嬉しい?」と声を掛けると、崔さんは「嬉しいよ、とても」と満足そうに答えた。

 英男さんの姉、英子(ヨンジャ)さんは記念撮影を終えた後、崔さんが車いすに座ると「息子がくれた車いすの座り心地はどう?」と声をかけた。崔さんは「楽でいい」と答え涙を拭いた。英男さんが同日午前に崔さんに贈った車いすは米国のブランド「ドクターK」で、再開初日に大韓赤十字社の公用車いすに乗った母親の姿を見て、プレゼントを思いついたという。

 北朝鮮は当初、英男さんら家族の共同昼食を5分間だけ公開するとしていたが、和気あいあいとした雰囲気になったこともあり、20分以上公開を延長した。

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