韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は先月29日、訪韓した米国のハリス副大統領と会談した。韓国が懸念を示している、米国の電気自動車(EV)連邦税額控除をめぐっても議論が交わされた。米ホワイトハウスによると、ハリス氏は懸念に理解を示し、両者は協議を継続することで一致した。

 安倍晋三元首相の国葬に参列するため日本を訪れていたハリス氏は29日、次の訪問先である韓国に到着した。米副大統領の訪韓は、ピョンチャン(平昌)五輪が開かれた2018年2月以来。

 到着後、尹氏との会談に臨んだ。尹氏は「韓米同盟は朝鮮半島を越え、グローバル同盟に発展しており、軍事同盟から経済技術同盟に拡大している」とした上で、「国民の自由、安全、繁栄を守る心強い支えとして引き続き韓米同盟を発展させていきたい」と述べた。これに対しハリス氏は、「この70年間、韓米同盟は朝鮮半島とインド太平洋、そして世界で安全保障と繁栄の核心軸になってきた」とし、「訪韓の目的は両国の力を強化し、共同の努力を強固にするため」と話した。

 会談では、韓国製電気自動車(EV)に不利益となることが予想される米国の「インフレ抑制法」についても議論された。尹氏は「両行が韓米FTA(自由貿易協定)の精神に基づき、双方が満足できる合意を導き出すため、緊密に協力することを期待する」と述べた。これに対し、ハリス氏はバイデン米大統領も韓国側の懸念を承知しているとし、「法施行の過程で、韓国側の憂慮を解消する方策が策定されるよう、解決策を模索していく」と応じた。

 米国で今年8月に成立した同法は、大企業や富裕層の課税強化などから財源を確保し、財政赤字を削減、EV購入やクリーンエネルギー導入といった気候変動対策と医療費負担軽減対策に4300億ドル(約59兆円)規模を投じるというもの。米国政府はEV1台当たり最大7500ドル(約103万円)の補助金を出し、2030年までに米国内の新車販売の半分をEVにする目標を掲げている。

 同法に基づくEV補助金の対象になるのは北米内で最終的に組み立てられたEVのみ。EVに搭載するバッテリーも、北米または米国と自由貿易協定(FTA)を締結した国で調達されたリチウムなどの重要鉱物を一定割合以上含んでいることを条件に定めている。

 韓国の自動車メーカーの現代自動車・起亜自動車はいずれも韓国でEV車両を生産しているため、補助金の対象から外れる。補助金対象となる他の自動車メーカーの同クラスEVよりも割高となり、販売上不利となることが予想されることから、韓国は同法に懸念を示している。現代自動車の主力EV「アイオニック5」は米国内で売り上げを伸ばしているが、同法により補助金対象から外れるため、対応を迫られている。同社は米ジョージア州に2025年上半期に稼働予定だったEV生産の新工場の建設を2024年10月に前倒しすることを検討している。米国内でEVを生産すれば、同法の補助金支給の対象となり、できるだけ早くこの恩恵を受けられるよう新工場の建設を前倒しし、売り上げへの打撃を最小限にとどめたい考えだ。

 ただ、同社に部品を納入する韓国内の部品メーカーもこの前倒し計画に対応しなければならず、同法が韓国の関連業界に与える影響は小さくない。韓国では、「米国に不意打ちを食らった」などと声が上がり、世界貿易機関(WTO)に提訴すべきとの意見も出るなど反発が強まっている。

 韓国は今月、同法をめぐる問題を解決するため、米国側と協議会を設置することで合意した。協議会には両国政府の通商分野に加え、EVに関連する機関も参加する見通し。

 ハリス氏は尹氏との会談に先立ち、同じく安倍元首相の国葬参列のため訪日していた韓国のハン・ドクス(韓悳洙)首相と27日、東京都内で会談した。ハン氏も同法に対する韓国産業界の懸念をハリス氏に伝えた。これに対しハリス氏は、通商代表部や財務省など、米国政府内でこの問題の解決に向けて努力すると約束したという。

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