日本では「反日」として有名な韓国の初代大統領イ・スンマン(李承晩)氏(画像提供:wowkorea)
日本では「反日」として有名な韓国の初代大統領イ・スンマン(李承晩)氏(画像提供:wowkorea)
韓国でも今年、日本の「国勢調査」に相当する「人口住宅総調査」(5年に一度)が実施された。韓国で外国人登録を行ってある日本人も対象となっている。

パク・ソジュン の最新ニュースまとめ

 半島で近代的な国勢調査が始まったのは、1925年。日本の半島統治の時期だった。当時、基準日を10月1日と設定した国勢調査は、以降第4回目まで行われた。

 日本の敗戦と韓国の独立以降、「国勢調査」の名前は無くなり、「第1回総人口調査」に変わった。しかし、その形式は日本の統治時代とそっくりだった。日本では「反日」として有名な韓国の初代大統領イ・スンマン(李承晩)氏も日本の国勢調査のやり方をそっくり受け入れていた。

 以降も暫くは日本統治時代と同じ10月1日の基準日を使っていたが、1980年からは11月1日となっている。ちなみに今回の“広報大使”はドラマ「梨泰院クラス」の主演俳優パク・ソジュン氏だった。

 現在の仕組みとしては、デジタルとアナログの併用実施と言える。具体的には全住民の20%を標本・対象としてインターネット・モバイル機器・電話等によるデジタル式の非対面調査がまず行われる。回答していない住民を対象に調査員がアナログ式に訪問調査・対面調査を実施すると言うものだ。

 特に今年はコロナウィルス騒動の所為で、一日二回の健康チェック、手指の消毒、マスクの着用を徹底するとの事で、調査に要する費用・負担に加え、「対面調査拒否」等もあり得るので、正確な調査実施が行われるのか心配されていた。

 ただ人口住宅総調査の実施については、国会でもしばしば問題視され議論となった。それは韓国人のプライバシー意識が高まり、個人情報を守りたいと言う意識が高まった結果だ。

 個人情報流出とその不利益発生への危機感、私生活上の秘密や自由等への関心が高まり、人口住宅総調査そのものに疑念を抱く傾向が生まれたのだ。

 特に問題なのは質問内容の中に、私有財産に関して、家は持ち家か賃貸か、家に部屋がいくつあるのか、住宅価格はいくらか、と言ったものがあったからだ。特に不動産保有の税金問題が昨今イシュー化している最中、神経質になってしまう住民が多かったと言う。

 また職場と役職を問う質問項目も、更にペットがいるか、水は何を飲んでいるのか、ミネラルウォーターを飲んでいるのか、浄水器を使っているのか、と言ったものも問題になった。格差や正規雇用・非正規雇用の問題が深刻化している昨今では、不快感を覚える住民が多かったと言う。

 また、より反発を喰らった質問としては、体が不自由でないのか、初婚はいつか、妊娠の計画があるのか、単独世帯ならば1人で暮らしている理由が何なのか、配偶者と死別したのか、再婚かどうか、死んだ子がいるか、私生児がいるか、夫婦が寝室を別にしているか、等と言った物があった。

 他人に知られたくない、性的指向や私生活上の秘密等を犯すものだと、多くの韓国人が感じたようだ。また経済的事情で結婚出来ない若年層にとっては、その不満を爆発させる契機ともなった。

 おまけに杓子定規に調査員が質問をする所為で、例えば15歳以上の女性を対象に出産計画の有無を問う質問が有るので、74歳女性に子供をもっと産むつもりがあるのか如何かと質問することみあったそうだ。詐欺師ではないかと疑われたとの笑い話も取り上げられていた。

 ちなみに人口住宅総調査をめぐるプライバシー侵害騒動は、前回の調査が行われた2015年にも生じていた。人口住宅総調査は個人の私生活上の秘密や自由等の基本権を侵害するという理由で、統計庁を相手取り憲法訴願審判を請求した住民がいた。

 統計庁はこれらの質問が国連の「人口調査ガイドライン」等に準じて設けられた等と反論した。結局2017年に憲法裁判所(最高裁判所に相当)が「調査を通じて達成しようとしている公益は、請求人の私益制限よりもはるかに大きく重要だ」として合憲判決を下した。

 つまり「私生活上の秘密や自由等」や不快感の解消よりも、公益の方が重要だとしたのだ。

 なお、今年はより多くの住民が、コロナウィルス騒動の所為で社会経済的に苦しく、こうした調査が格差や雇用の問題を想起させ、より敏感に不快感を覚え易い状況にある。

 日本でも同様だろうが、住民にとって納得出来る、もしくは甘受し得る公益と「私生活上の秘密や自由等」の均衡の追求は、韓国においても重要な課題になっている。
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