(画像提供:wowkorea)
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日本同様、韓国は今回の新型コロナウィルス騒動の発祥地とされる中国の武漢と地理的にも、また人の移動・交流の面でも至近距離だった。その為、政治的に交通・流通の遮断は難しかった。

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 その中であっても、過去のウイルス感染症の対応失敗の痛い経験を活かし、防疫体制を立派に立てた。この通称「K防疫」によって、防疫に成功していると自他共に評されている。

 先週までの統計で、感染者総数25,199人に対して死亡者数444人、致死率1.76%となっている。他の国と比べて好成績と言って良い。従って「K防疫」の中間評価は”成功”と言えるだろう。

 今までの”成功”で韓国の「防疫管理本部」は「疾病管理庁」に昇格した。保守政権時代の防疫失敗で左遷されていたチョン・ウンギョン本部長は華々しく初代庁長となった。彼女はあの「TIME」誌が選んだ今年の「世界で最も影響力のある100人」入りを果たしたほどだ。

 この「TIME 100」入りした他の韓国人は映画「パラサイト~半地下の家族」でカンヌ映画祭やアカデミー賞を席巻したポン・ジュノ監督。日本人としてはジャーナリストの伊藤詩織さんと大坂なおみ選手。「K防疫」の成功はその面々との比較でも良く分かる。

 その恩恵は彼女を任命した文在寅大統領にも至った。新型コロナ蔓延の前までは”タマネギ男”問題など側近の問題や、保守系大統領の弾劾で権力を握った革新系の”改革”の副作用で今年4月の総選挙は厳しいと予測されていた。しかし、コロナ時代の勃発と「K防疫」の成功は韓国国民に”政治”や”経済”よりも”防疫”を選ばせた。

 一方、同じ状況の日本では「K防疫」は立派な参考になった。欧米とはあまりにも環境の違いがあるからだ。韓国の迅速な大量PCR検査の体制と「ドライブスルー」は日本でも話題となった。しかし、この体制は韓国と言う国の特殊性ゆえであり、自由民主主義的な他国には導入が難しい特性があった。韓国でお馴染みのフランス人ギ・ソルマン氏も指摘している所だ。つまり「K防疫」とは、

1)徴兵制のお陰で豊富な医療人材の大量動員ができ、
2)公益や公共福祉の下では私生活上の秘密(プライバシー)と言う私権や自由の制約ができ、
3)違反行為・違反者の密告への報奨制度を始めとした、人的な相互監視の制度化が一般化しており、
4)監視カメラや携帯電話の通信記録と言ったIT技術的な監視が可能であり、
5)違反行為・違反者への刑罰を容易に科す事ができ、
6)中央集権の伝統による素早い集中対応と国民の「パルリパルリ」(速く速く)文化があり、

初めて可能なものだ。

 最後の「パルリパルリ」文化により急いで作られた検査キットの質についてはあえて問わないが、大量の感染被疑者への検査を素早く実施し、場合によっては隔離治療するには、当然、大量の医療人材が必要となる。

 韓国では「公衆保健医」と言う、僻地を含め指定場所での勤務をこなす事が「徴兵制」の代替任務として認められる。今回のような事態においても大量動員・投入が可能なのだ。更に従来より、犯罪全般について監視カメラや携帯電話の通信記録と言ったIT技術的な監視が容易である。

 また、違反行為・違反者の密告への報奨制度を始めとした、人的な相互監視の制度化が防犯の為に一般化している。これで防犯目的のみに限定されず、今回の防疫目的にまで拡大利用されたのだ。

 この背景には、長年の南北対峙状態によって培われた韓国人の感覚において、日本ならば何より重んじられている私生活「プライバシー」上の秘密と言う私権や自由と言ったものよりも、公益や公共福祉を優先すべきだと言う価値観が勝っているからだ。

 故に「宗教(活動)の自由」と言う自由権の中でも最も尊重されるべきものを含め、国家が干渉してはならないとされる「自由・私権」についても、礼拝集会の規制や禁止を政府が科しても、"コロナ克服”のためには問題視されないのだ。むしろ防疫ルールの違反者に対する厳罰や高額の罰金、賠償金の賦課を韓国世論は支持している。

 従って韓国の今回の防疫は成功している一方で、自由・私権を最大限尊重する他の自由民主主義国家の日本では「K防疫」の模倣や実施が非常に難しい状況である。

 その韓国の「K防疫」に、今、危機が訪れている。新型コロナとインフルエンザの同時蔓延を意味する「ツインデミック」である。地球の北半球は秋から冬に季節が変わり、2つのウイルスが最も活性化される気温に近づいているのだ。ここまでは日本も同じ。

 まだ開発中の新型コロナのワクチンが出来上がる前、実績のあるインフルエンザ予防接種は一見簡単に見えるが、韓国特有の”パルリパルリ”文化が毒となった。厳しい「国家予防接種事業」の予算により、経験豊かなワクチン流通会社は事業者選定で脱落し、冷蔵流通が当たり前のワクチンが紙箱だけで常温で流通されてしまったのだ。その中には、変性し白い固形が発見されたものもあった。

 これが報道されると、韓国政府は流通中のワクチンを回収したものの、全量回収には至らなかった。そして、先週16日、17歳の青年がインフルエンザ予防接種後の2日後に死亡した。そして、本日まで1週間の間、48人の韓国人が予防接種の後、命を失った。

 韓国の「医師協会」が1週間の接種中断を求め、一部の地方自治団体が予防接種の一旦中止を宣言したが、「K防疫」の指揮を執っている「疾病管理庁」は逆にその地方自治団体に中央の方針に従うように警告している。

 予防接種とその後に続く死亡例の因果関係がまだはっきりしない中、必死に「ツインデミック」を防止しようとする「K防疫」は韓国国民に疑われ始めている。再来年の3月にはまた韓国の大統領選挙が行われる。韓国の革新系政権は果たして維持されるのか。その運命は「K防疫」の成敗とそれに対する韓国国民の”疑い”にかかっているかもしれない。

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