写真=韓国陸軍公式サイトより
写真=韓国陸軍公式サイトより
かつての韓国芸能界では、兵役が男性芸能人の「墓場」にも例えられた。兵役に行っている間に人気が落ちて、芸能界を去らざるをえなかった人が多かったからだ。果たして、現在はどうなのだろうか。いまだに「墓場」になっているのか。

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■長いブランクは致命傷
 かつての男性芸能人が兵役中に人気を落としたのは、徴兵期間が長かったことも理由の1つだった。

 それでは、時代によって徴兵期間はどう変化しただろうか。陸軍を例にとると、以下のように短くなってきた。

 1968年→36か月

 1990年→30か月

 1993年→26か月

 2003年→24か月

 2011年→21か月

 この変化を見ると一目瞭然だが、かつては徴兵期間が36か月もあった。この空白期間はあまりに大きい。変化のスピードがはやい韓国社会で、丸3年も芸能界からいなくなったら人気が落ちてしまうのもやむをえなかった。兵役が「墓場」と称されたのも無理はない。

 徐々に徴兵期間は短くなり、2011年からは21か月になった。2年を切って1年9か月。丸3年に比べると、違いは歴然としている。入隊する芸能人にとっても、精神的な負担はかなり違うだろう。

■閉ざされた軍隊
 徴兵期間が長かったことの他に、もう1つ、兵役入りした芸能人が忘れられる原因があった。

 それは軍務中の活動が一般社会にまったく伝わらなかったことだ。

 今なら、入隊した芸能人の言動は折にふれてネット上を賑わす。国防省が「開かれた軍隊」を標榜して広報活動に力を入れている成果だ。そうした情報のおかげで、ファンも入隊したスターを忘れずに済むのである。

 しかし、かつては「閉ざされた軍隊」が当たり前で、情報開示がないので入隊したスターの様子は一切わからなかった。

 こうなってしまっては、徐々に忘れられてしまうのを止められない。

 そうでなくても、芸能界には新しいスターが次々に誕生してくる。新陳代謝が激しい世界だけに、長いブランクがあると致命傷になってしまう。

 こうした事情が重なって、「兵役は芸能人の墓場」という言葉が生まれた。

 それだけに、人気スターにとって兵役は恐怖だった。2004年に大物スター(ソン・スンホン、チャン・ヒョク、ハン・ジェソクなど)を巻き込む兵役忌避事件が芸能界で起こったが、違法に手を染めてまで兵役を避けたかったのは、言い伝えられてきた「墓場」というイメージが頭にこびりついていたからだろう。

■兵役はキャリアになる
 皮肉なことに、2004年の兵役忌避事件が、芸能界における兵役問題の転換点となった。

 事件の当事者だったソン・スンホンは心からの謝罪を表明して、最前線で立派に兵役を全うした。除隊後に芸能界に復帰した彼はどうなったか。

 人気が凋落するどころか、兵役に行く前より俳優としての評価を高めている。チャン・ヒョクもしかり、である。

 彼らが示したのは、兵役も俳優に必要な経験の1つということだ。ソン・スンホンがいい例だ。

 入隊する以前の彼は、ナイーブで繊細な演技を持ち味にしていたが、除隊後には、男らしくて骨太な演技が多くなって評価が上がった。まさに、兵役を境にイメージの転換に成功したのだ。

 さらに、兵役を自分のキャリアに生かしたのがヒョンビンだった。

 彼は、軍隊で訓練が一番厳しいことで知られる海兵隊に自ら志願し、「男の中の男」と言われる部隊で兵役を全うした。軍隊に嫌々行くのではなく、そこで自分をもう一度鍛えなおすという選択をしたのである。

 除隊後のヒョンビンの復帰第一作は映画『王の涙-イ・サンの決断-』だった。この映画を見て私(康熙奉〔カン・ヒボン〕)は本当に驚いた。

■芸能活動に役立つ「強み」
 「これがあのヒョンビンなのか」

 まるで別人のような印象を持った。

 この映画でヒョンビンは朝鮮王朝22代王・正祖(チョンジョ)に扮したが、鋭い視線を放つ精悍な顔、弓を引くときの背中の筋骨隆々ぶり、剣のさばきの俊敏さ……などがスクリーン上で際立っていた。

 兵役に行く前のヒョンビンだったら、あそこまで迫力満点に演じきれなかっただろう。

やはり海兵隊に行ってヒョンビンは変わった。それは今後の俳優人生にとっても大きな変身であった。

 同じことを『太陽の末裔』で大ブレークしたソン・ジュンギにも言える。彼は軍事境界線のすぐ近くの最前線で軍務を全うして昨年5月に除隊した。復帰作が『太陽の末裔』でエリート軍人の役だった。

 兵役以前には柔らかなイメージが強すぎたソン・ジュンギだが、『太陽の末裔』の軍人役はピッタリはまっていた。入隊中に逞しいイメージを付加したことが演技の上でもプラスになったのである。

 もはや兵役は、ただのブランクではない。今後の芸能活動に役立つ「強み」を持ち帰ってくる場なのかもしれない。

■今後は徴兵期間の短縮もありうる
 最近の兵役関係のニュースでいうと、東方神起のユンホが特級戦士に選ばれたのが特筆すべきことだった。陸軍の軍楽隊に所属して行事や練習で多忙なはずなのに、射撃と体力で超一流の軍人であることを証明して喝采を浴びた。

 彼は「素敵な怪物になって帰ってきます」と約束して昨年7月に入隊していったが、有言実行で怪物の片鱗を見せている。入隊するときの並々ならぬ決意が、彼の徴兵期間を中身の濃いものにさせているのだろう。除隊したときに、どんな素敵な怪物になって芸能界に戻ってくるかが楽しみだ。

 結局、「短縮された徴兵期間」と「開示される軍務中の言動」によって、芸能人の兵役は大きなブランクにならなくなってきている。

 加えて、除隊後にはさらに成長したスターの姿が見られるのである。ファンも信頼して待つことができるのではないだろうか。

 今後、徴兵期間はさらに短縮される可能性がある。なぜなら、現在は軍人が多すぎて余った状況になっており、国防省は63万人の韓国軍を10万人以上も減らす計画を持っているのだ。その流れからいっても、徴兵期間の短縮は実現可能な問題になっている。

「もはや芸能人にとって兵役は墓場ではない」

 除隊後にさらに活躍するスターの多さが、そう言い切れる根拠である。

文=康 熙奉(カン ヒボン)
(ロコレ提供)

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