韓国のバスは日本と比べて運賃は安いのだが…(写真提供:ロコレ)
韓国のバスは日本と比べて運賃は安いのだが…(写真提供:ロコレ)
■格安な韓国のバス運賃

 日本でも韓国でも、地方を旅するときは鉄道よりもバスに乗ることが多い。都市部と比べて鉄道が少ないから、バスの出番が多くなるのも当然か。

 日本で地方のバスに乗ったときは、ごく平穏だ。本数こそ少ないものの、渋滞がないから時刻にはわりと正確。すいているから、車内でもゆっくりできるし、車窓からの眺めもいい。

 運転手も親切だ。ただ、運賃が高いのが玉にキズ。運転席の斜め上の料金表示盤の数字がめまぐるしく変わり、そのときだけ落ちつかなくなる。乗る人が少ないから、運賃を上げないと路線を維持できないのもわかるが…。

 その点、韓国のバスは日本よりはるかに運賃が格安。感覚的に、日本の三分の一くらいか。もっと安いかもしれない。バス会社もこれでよくやっていけるな、と感心するほどなのだ。

 そういうわけで、韓国では地方でも運賃を気にしないでバスに乗っていられる。逆に、気になるのが運転手の存在。自分が好きな歌謡曲を大音量で流す人もいれば、携帯電話で奥さんと延々と話している人もいる。日本では絶対にお目にかかれない光景。まさに、運転手の個性が丸出しなのである。

 そのうえ、スピードを出す。山道を飛ばすバスに乗ったときは、バスの揺れに応じてからだが常に上下左右に大きく振られる。

 下車するときは、グッタリである。


■時速100キロで疾走するバス

 乗っていた路線バスがスピード違反でつかまったことがある。そのときの運転手と警察官のやりとりが面白かった。

 年上の運転手は警察官に強い口調で文句を言い続けていて、年下の警察官は過敏に反応しないように気をつけながら、しっかりと違反の手続きを終えていた。こういう場合でも「長幼の序」が生きていたのは韓国らしい。

 それでも、運転手の立腹はおさまらなかった。違反を取られて再び動きだしたバスは、さらにスピードを出して田舎道を疾走した。

 時速100キロは出ていただろう。

「もう1回つかまったら、どうするのか」

 そう考えるのは乗客だけで、運転手は「本当のスピード違反を見せてやる」という気持ちだったのかもしれない。乗っているほうは、たまったものじゃないが…。

 今の韓国では、都市部のバスは平穏に運行されている。乗客が多い中で運転手もわがままにできない。

 しかし、地方に行くと事情は変わる。乗客は個性の強い運転手のバスに「乗せていただく」のである。


文=康 熙奉〔カン・ヒボン〕
(ロコレ提供)

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