キム・ジウン監督=(聯合ニュース)
キム・ジウン監督=(聯合ニュース)
韓国の新作映画『悪魔を見た』は、衝撃的なシーンが多い。よほど心臓が強くなければ、1度や2度はスクリーンから目をそらすだろう。「ここまでやらなければいけないのか?」という声も上がりそうだ。

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 しかし、先ごろソウル・江南のカフェで会ったキム・ジウン監督は「もっと強く表現すべきだったのに、残念だ」と語った。企画段階から残酷な復讐(ふくしゅう)を目指した作品なだけに、いくつものシーンをカットすることになり、退屈な復讐になるのではないか気をもんだという。

 作品は、映像物等級委員会から2度にわたり、「制限上映可」の判定を受けた。制限上映館に限り上映を認めるというものだが、韓国にはその制限上映館がないため、事実上、「封切不可能」を言い渡された形だ。結局キム監督は、切断した人体の一部を冷蔵庫に入れるシーンなど、問題となった3シーンをカットし、3度目の審議にかけた。監督としてのプライドは傷ついたが、70億ウォン(約5億円)もの制作費が投じられた作品だけに、致し方ない選択だった。

 「自分自身が納得できていなかったので、余計に耐え難いことでした。成人を対象に作った映画だし、国内外有名作品の暴力シーンの水準に基づいて作りましたから。一体、これから何を基準に映画を作ればいいのか、難儀しますね」。

 それでも残酷シーンは残っていると指摘されるが、「監督としての美徳は、実感できるシーン、写実的描写を撮ること」だというキム監督は、ストーリーの構成に忠実であろうと努力したのだと語った。

 『悪魔を見た』は、婚約者を連続殺人犯に殺され失った国家情報院の要員スヒョン(イ・ビョンホン)と、連続殺人犯ギョンチョル(チェ・ミンシク)の対決を描く復讐の物語だ。スヒョンは悪魔・ギョンチョルに、すさまじい報復を加える。その過程で、スヒョンの中に存在する悪魔的な部分が明らかになっていく。スヒョンはもがけばもがくほど、「悪魔性」の深い沼に陥っていく。

 暴力性の問題を除けば、長所の多い作品だ。ストーリーの緊密度では、キム監督作品でも際立っている。退屈を感じる暇もなく、144分があっという間に過ぎていく。

 『グッド・バッド・ウィアード』が終わってから、スペクタクル作品は映像はすばらしいが緊密さに欠ける弱点があり、次回作は緊密感あふれる作品にしたいと思ったというキム監督。これまでも、前作とは異なるスタイルの作品を撮ってきた。たくさんのキャラクターが登場し、事件を繰り広げていく『クワイエット・ファミリー』の後に、ソン・ガンホという1キャラクターがストーリーを引っ張る『反則王』、作品の情緒が1個人の内面に向かう『甘い人生』の後は、情緒が外側に広がるスペクタクル作『グッド・バッド・ウィアード』という具合だ。
 「初めて脚本を読んだとき、暴力性が強すぎるとも感じましたが、魅力があった。初めてしまえば最後まで突っ走る緊密感がとてつもない脚本でした。荒削りながら、どうすれば映画的な枠に引き上げられるだろうと考えさせるものでしたね」。

 さらに今回は、”キム・ジウン印”の映画とされてきた、ジャンル的な踏み込み、空間の活用よりも、俳優の演技に没頭したという。物語は、スヒョンの感情を追いかける。スヒョンは復讐という確信に満ちているが、次第にそうした感情は不確実になっていく。スヒョンにはほの暗さや、ぼんやりとしたかすみがある。そうした全体的な雰囲気に、証明、音楽、色彩などすべてを合わせ撮影した。

 「ファンとして、チェ・ミンシク、イ・ビョンホンという性質の異なる2人の俳優の姿を大きなスクリーンで見たかった。もし映画が好評ならば、俳優が100%以上のことをしてくれたおかげです。イ・ビョンホンの健在、チェ・ミンシクの5年ぶりの復帰、彼らの演技対決を見ることができる作品と、自負しています」。

 すでに次回作を構想中だというキム監督。韓国で2本、海外から2本、脚本を受け取っている。

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