イ・チャンドン監督(右)
イ・チャンドン監督(右)
第63回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品されたイ・チャンドン監督作品『詩』のマスコミ試写会が、フランス・カンヌのリュミエール劇場で19日(現地時間)に行われた。

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 試写会終了後の公式記者会見で、イ監督は『詩』とは目に見える花のように美しいものだけではなく、醜くて汚いものの裏に隠されている美しさを見つけることで、「映画を通じ詩の本質を問いたかった」と語った。

 映画『詩』は、文学の一つのジャンルとしての詩に関する作品でもあるが、芸術または映画に関する物語でもあり、ひいては目に見えないあるもの、金銭的な価値を計ることのできないあるものに対するストーリーだと説明した。詩がどのようにして詩になり、われわれが住む世の中や生活の中で、詩の意味がどのような方法で存在するのかを見つける作品だと紹介した。

 映画『詩』は、同映画祭のコンペティション部門に出品されたほかの18作品と最高賞のパルムドールを競う。マスコミ試写会終了後、会場は大きな拍手に包まれ、一部の外信記者らは「有力なパルムドール候補」だと、肯定的に評価した。

 映画は、少女のような60代の女性・ミジャが初めて詩を書くことになる過程と、集団で性暴力を受け自殺した少女をめぐる周囲の人々のストーリーで構成されている。

 イ監督は、性暴行を受けた少女が自殺する無残な事件は韓国だけでなく、世界中で起こり得るとし、映画を通じ、われわれの日常や道徳性に対し、質問を投げ掛けたかったと話した。

 映画にはさまざまま詩が登場する。イ監督が好きな詩もあれば、専門的な詩、アマチュアが書いた詩など多彩だ。最後にミジャが書いた詩は、イ監督が書いたものだという。

 前作の『シークレット・サンシャイン』(2007年)と『詩』をあえて比較すると、『シークレット・サンシャイン』が被害者を扱った作品なら、「詩」は加害者の苦痛を描いたものだと説明した。『詩』では、加害者の孫を持つ女性の苦痛と罪の意識、そして、詩を書くために見つけなければならないこの世の美しさとの間にある緊張と葛藤(かっとう)を描きたかったと話した。

 映画産業の低迷については、韓国だけでなく世界的な現象であり、「昔から好きだった、作ってみたかった、見たかった映画は次第に力を失っている」と残念な気持ちを隠せないようすだった。

 イ監督はこれまで、教師、小説家、文化観光部長官などさまざまな職業を経験している。そのなかで最も好む職業を尋ねると、これまで一度も好んで職業を選んだことはなく、映画監督という職業も例外ではないと答えた。ただ、映画監督の仕事はストレスも多いが、おもしろい職業だ評価した。

 昨年はコンペ部門の審査委員として、ことしは同部門出品作の監督としてカンヌを訪れた。どちらがよいか質問すると、両方ともそれほどよいとは言えないような気がするという答えが返ってきた。

 「審査委員としてほかの監督の映画を評価し点数をつけることは負担になります。また、出品作の監督として観客と会うことはうれしいですが、結果を気にせずに純粋に映画祭を楽しむことは難しい…。いずれにせよ、昨年よりはことしの方がいいですね」。

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