「ソウルに来た感想ですか?漢江を見て感激しました。『グエムル~漢江の怪物~』を観たので(笑)」
 
公開中の映画『ゆれる』の西川美和監督は、そう言って笑った。3年前の<釜山国際映画祭>以来2度目、18日に来韓した西川監督は、自身の作品の人気に驚きを見せた。全国5館での上映は、日本インディーズ映画としてはかなり順調と言えるものだ。10日の封切以来、18日現在で1万8000人の観客を動員している。輸入会社の動員目標は3万人だったという。

ゼロ の最新ニュースまとめ

『ゆれる』は、兄弟の間に流れる微妙な心理を繊細にとらえた作品だ。主演は韓国国内でも人気の俳優オダギリジョー。1人の女性の死によって明るみになる互いへの嫉妬、利己心、憤怒といった複雑な感情が、女性特有の繊細なタッチで描かれている。作品のモチーフは、夢から得たのだとか。

「夢の中で友達が人を殺して、私が唯一の目撃者だったんです。私は友達をかばおうと努力するけれど、一方では殺人者の友達を持つことになった自分を心配していました。目を覚ました時はがっかりした気分で、自分の中の違う姿を見た思いでした」と西川監督は語った。普段は気づくことのない自分の中の闇、自分では分からない自分の姿を改めて刻むことのできる作品にしたかったという。また、作品を通じて特定のメッセージを伝えるというよりも、人間というものを暴きたかったのだと話す。

作品の人気には、“主演オダギリジョー”というネームバリューも大きく働いたと言えるだろう。西川監督は、「映画に対する真摯な姿勢と、心から映画を愛する俳優だと見込み、オダギリさんをキャスティングした」と説明した。実際もその通りで、怖いほど感覚の優れた俳優だと評価する。かといって感覚ばかりに頼るのではなく、役割に対する自分なりの解釈を熱心にする、その解釈の水準はとても高く深いと絶賛した。

西川監督が今回の来韓で是非実現したいと考えていたことは、ポン・ジュノ監督との対談だ。両監督には、今年の<カンヌ国際映画祭>の監督週間に、『グエムル~漢江の怪物~』と『ゆれる』が招待されたという縁がある。しかし残念ながら、ポン監督は海外映画祭出席のため韓国に不在だ。『グエムル~漢江の怪物~』をとても楽しく観たという西川監督は、韓国映画と俳優に高い関心を示した。「韓国映画はかなり観ています。以前『クライング・フィスト』を観ましたが、とても面白かったです。私と同年代の監督(リュ・スンワン)がこんな作品を作ったのかと驚きました。好きな俳優はたくさんいます。ソン・ガンホさんは画面に登場するだけで嬉しくなりますし、ソル・ギョングさんを見ていると、日本人だったらよかったのにとまで思いますね」

早稲田大学を卒業後、2002年に『蛇イチゴ』でデビュー、『ゆれる』は4年ぶり2本目の作品だ。『ゆれる』の制作課程では、「自分の中にあるものをすべて込めよう、これが最後の映画だと思って作ろう」と考えていたという西川監督は、「今は抜け殻だけが残った状態」と話す。最近になって、観客に作品を披露するという作業が終わるまでが映画制作なのだと考えるようになったのだとか。「この作品を世に送り出す作業をひとまず完了した時点で、次の作品をゼロから作り始めることができるのだと思います」と語った。


Copyright 2006(C)YONHAPNEWS. All rights reserved.

Copyright 2006(C)YONHAPNEWS. All rights reserved. 0