<W解説>韓国でエスカレートする尹錫悦大統領夫妻への中傷、もはや批判・風刺のレベルを越えている(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国でエスカレートする尹錫悦大統領夫妻への中傷、もはや批判・風刺のレベルを越えている(画像提供:wowkorea)
韓国の革新系市民団体「ろうそく勝利転換行動」が今月11日にソウル中心部で集会を開いた際、会場にユン・ソギョル(尹錫悦)大統領夫妻らの顔写真をおもちゃの弓矢で狙う的当てゲームのコーナーが設置され、物議を醸している。この行為をSNS上で問題視した保守系与党「国民の力」の議員は「政治的立場が違うという理由で、反感を表現する程度が度を超えて久しい」と嘆いた。

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昨年、5月に尹大統領が就任して以降、尹氏夫妻への中傷が繰り返されてきた。昨年には尹氏を風刺した、高校生による漫画作品が物議を醸した。作品は全国学生漫画公募展に出品され、金賞を受賞したが、公募展を後援する文化体育観光部(部は省に相当)は、「公募展の趣旨に合わない作品を(受賞作として)選定した」として、公募展を主催した漫画映像振興院に対し厳重に警告した。

この時、物議を醸した作品は、尹氏の顔をした列車が走り、運転席には尹大統領の妻、キム・ゴンヒ(金建希)夫人を表現したと思われる女性がいて、大統領を「操っている」かのような印象を与えていると指摘された。

「ユン・ソクヨルチャ」というタイトルのこの作品は、「第23回全国学生漫画コンテスト」で最高賞の金賞を受賞した。「ヨルチャ」は韓国語で「列車」を意味し、尹氏の名「ソクヨル(ソギョル)」と掛け合わせている。

作品について報道されるや、文化体育観光部は声明を発表。「振興院が中高生を対象に主催した全国学生漫画公募展において、政治的なテーマを露骨に含めた作品を賞に選定し、展示したことは、学生の漫画の創作意欲をかきたてようとする行事の趣旨に反しており、遺憾。厳重注意する」とした。公募展は韓国政府から後援を受けており、文化体育観光部は今後、後援を取り消すこともあり得ると警告した。

当時、この作品は物議を醸したが、その一方で、政府の対応に「表現の自由の抑圧」だという批判も上がり、作品を描いた生徒の高校には激励のメッセージも多数寄せられたとされる。

今年1月には、国会議員会館で展示会が開催されるにあたり、尹氏夫妻の風刺画が並べられた。展示会はソウル民族芸術団体総連合韓国などが主催し、尹政権の政治勢力などを風刺の対象とするという趣旨で企画された。しかし、会期前に国会事務所職員によって撤去された。撤去されたのは、倒れた尹大統領のそばに韓国焼酎の瓶が転がり、その上に金夫人が座っている姿を描いた作品や、金夫人が「論文盗作46%でも博士に合格します」と語る姿を描いた作品などだった。金夫人をめぐっては、大学院で博士号を取得した論文の盗作疑惑が取り沙汰されたことがある。国会事務所は「特定の人物・団体の誹謗など、他人の権利を侵害する場合、会場の使用を制限できる」とする内規に従い作品を撤去したと説明した。

こうした、尹氏夫妻への中傷ともいうべき行為は次第にエスカレートしている。前述した的当てゲームは、尹氏夫妻らの顔写真が貼られた人形めがけておもちゃの弓を射るというもので、人形の後ろには、尹氏の顔写真を中央に配した的と、その横に「暖房費爆弾」、「親日売国」などとプリントされた布も貼られていた。現在、韓国では暖房費の値上がりに対する国民の不満が高まっているほか、尹政権の対日政策が、日本に譲歩しすぎだと批判が上がっている。

集会を主催した市民団体「ろうそく勝利転換行動」は、参加者が的当てゲームをする写真を公式コミュニティサイトに掲載。尹政権に国民の怒りが高まっていると訴えた。ただ、同団体の関係者は「(的当てゲームコーナーは)『ろうそく勝利転換行動』が公式に設置したブースではなく、集会に参加した数多い市民団体のうちの一つが設置したもの」と説明。一方、「民主社会において大統領に対しても十分に可能な水準の風刺パフォーマンスだ」とも語った。

与党「国民の力」のある議員は「相変わらず『こちら側』でなければ敵だという政治的物差しを当てるような陣営倫理が横行している」と指摘。「『こちら側』ではないから敵として扱い、暴力を駆使することを正当化する国は、ひとえに独裁国家である北朝鮮だけ。ここは自由民主主義の大韓民国だ」と強調した。

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