<韓国旅行>誰もが詩人になり哲学者になる韓国3大岩山の月出山(画像提供:wowkorea)
<韓国旅行>誰もが詩人になり哲学者になる韓国3大岩山の月出山(画像提供:wowkorea)
韓国南西部に位置するチョルラナムド(全羅南道)ヨンアム(霊岩)郡に巨大な山がある。湖南(全羅道)の“小金剛”と呼ばれるウォルチュル(月出)山だ。

 木よりも奇岩怪石が多い岩山で、山全体が国立公園だ。最高峰809メートルのチョンファンボン(天皇峰)を中心にありとあらゆる形状の岩が集結して展示場を彷彿とさせる。一年中、多くの人が訪れるがいざ月出山に登る人は多くない。荒々しく危なそうに見える圧倒的な風貌に臆して登るなんて思いもしないが大きな理由だ。先人たちが月出山に登らず、遠くから見ながら歌っていた理由もそのためだ。こうして見つめていた月出山に登った。木の歯が落ち、これまで隠れていた月出山の岩稜が雄大な姿を見せていた。

 月出山は霊岩郡とカンジン(康津)郡の間にそびえ立つ岩山で、外形的にどこを見ても自然に感嘆の声をあげてしまう。それもそのはず。月出山はソルアク(雪嶽)山、チュワン(周王)山に続く韓国の代表的な3大岩山に挙げられる。韓国で一番小さな国立公園で、朝鮮半島最南端の山岳国立公園に挙げられた理由もそこにある。

 山の気も尋常ではない。月出山は陽の形成に陰の気を同時に持つ。のこぎりの歯のようにそびえる荒い岩からは陽の気が、夜になって山腹にかかる月の姿からは陰の気があふれる。それでもこの全ての気が絶妙な調和を成しているのが月出山だ。

 このような姿に先人たちは、月出山にいくつもの名前を付けた。まるで山から月が生まれたように見えるからと「月生山」、また山の上に浮かぶ月が宝のようだと「宝月山」と呼んだという。今は月が出る山という意味の「月出山」と呼ばれる。韓国の山の中で月が出ない山があるかどうかは別として、先人たちは月出山の「月が出る景色」を最高としてきた。霊岩という地名も、月出山の霊験あらたかな岩から由来している。これ以外にも、ファゲ(華蓋)山、クムジョ山、チョンブル山、チジェ山、ウォル山、ナン山など計13の名前がある。月出山が一番奥深い魅力に名前を付けるのが好きな人たちが名前を付けた結果だ。

 この山の魅力にハマった先人たちの評価も様々だ。朝鮮時代の文人キム・グクキは「青い断崖と紫の谷間だけがそびえ、幾重にもなる峰が空を突き抜けて雄大で奇異さを誇る」という文章を、キム・シスプは月出山を訪れ「全羅道で一番の絵のような山があるので、月は天に昇らず山間に昇っていた」とつづった。また朝鮮時代の地理書「択里志」を書いたイ・ジュンファンは「石の先がとがって飛んでいるようだ」と表現した。

 国境を越えて中国でも月出山の名が知られている。「東国輿地勝覧」には、月出山を「本国以外では華蓋山と称する」と書かれているが、漢字で輝く「華」にかぶせる「蓋」と書くのは文殊菩薩がここに至った時、雲が月出山の頂上に立って輝いたからだというのだ。

 月出山は「登る山」ではなく「見る山」に近い。過去に山の威容自体があまりに立派だったため登る気がしないからだ。最高峰の天皇峰をはじめ、クジョン(九井)峰、サジャ(獅子)峰、チュジ(朱芝)峰などが東から西に一つの小さな山脈を形成しているが、広い平原から見ると荒くて急峻な岩がそびえており、見ることさえできないような威厳に満ちていた。荒々しい区間に鉄製のデッキや雲橋を架けた今の月出山もぞっとするほどだが、以前はどれほどだっただろうか。

 月出山は昔も今も「霊山」と呼ばれる。削られたような奇岩絶壁が多く、簡単に懐を出さないからだ。だからなのか、月出山が抱く「霊岩」という地元では不思議な話が言い伝えられている。月出山に3つの動く大きな岩があった。この岩のために霊岩に大きな人物が出るという伝説が知られると、これをねたんだ中国人が岩の3つを全部押して山の下に落としてしまった。しかし、そのうちの1つがいつの間にか元の場所に戻り、人たちは岩を神霊な岩と呼んだ。その後、この村を「霊岩」と呼んだというのだ。岩も、その岩が成した山も、そしてその山を抱えた村も、全て近づくことのできない気にあふれているという意味だ。そんな由来からか分からないが、日本の飛鳥文化の元祖と崇められている王仁と、新羅末期の風水思想の大家だったトソンもここで生まれたと伝えられている。

 朝早く、ソウルのヨンサン(龍山)駅からナジュ(羅州)駅までKTXに乗って移動後、羅州から霊岩まで40分ほど車で走る。月出山の頂上である天皇峰まで行く道は5つ。そのうち天皇寺からトガプ(道岬)寺まで行く東西縦走コース(9.5キロメートル)を除外すると、大概は往復6~7キロメートルと短い。一般的な山歩きなら、2時間ほどの距離だ。しかし月出山は少し違う。1年に10回はこの山に登るという霊岩郡庁所属の公務員は「月出山は809メートルのそれほど高い山ではない。しかし海抜20~30メートルから始まり、アップダウンの幅がすごくて1000メートル以上の山登りに匹敵する」と説明した。

 今回選んだのは、天皇寺~雲橋~風滝~天皇峰と続くコースだ。本来は、風滝ではなく獅子峰を経由するコースを選択したが、日が暮れる前に降りてくるのは大変だという助言に従った。

 登山靴のひもを締め直し、山登りを始めた。月出山彫刻公園と天皇野営場を過ぎると天皇寺だ。ここまでは平たんなコース。天皇寺を過ぎるとすぐに急傾斜が続く。1時間ほど休みなく上り坂だ。荒々しい石の道を歩いては休むを繰り返しながら登ると、月出山の名物「雲橋」に到着。シル峰とメ(梅)峰を結ぶ地上120メートル高さで長さは約50メートルの橋だ。華やかな色の橋は、月出山の雄大な岩稜と対比されてすぐに目に飛び込んでくる。頑丈な鉄製の橋にもかかわらず、橋の上に来るとくらっとする。それでも切ったような梅峰と南側に霊岩郡の広い野原が一望でき、訪れた客に人気が高い橋だ。橋を渡ると道は獅子峰に続くが、残念ながら我々はここで降りて行き、風滝に向かった。

 雲橋から天皇寺の分かれ道までは果てしなく下り坂だ。上がってきた分、下りて行くので力が抜けるような感じだ。この険しい道に階段を作った人たちの苦労に感謝しながら歩いた。分かれ道から滝までは雲橋の高さの分、再び上らなければならない。休みなく続く上り坂を見つめながら上がっていく。風滝は垂直の水流が谷間から押し寄せたために風に舞うということで名付けられた。高さ15メートルの岸壁から水が落ちている。期待していた荘厳な水流ではないが、登山客を涼ませるのには十分だ。

 風滝から六兄弟岩まで再び上り坂。六兄弟岩の下の展望台に行くと、月出山の岩稜が一望できる。展望台の左側の稜線には6つの岩の峰、六兄弟岩が奇妙に並んでいる。正面には雲橋が見下ろせる。雲橋を中腹に置き、谷間から湧き出る獅子峰が雄大だ。

 しばらく息を整えて上がると月出山の稜線の幹だ。険しい岩道が続く。二つに分かれるクァンアムトの真ん中まで登ると、月出山の真の姿が見え始める。向かい側には霊岩の広い平野が広がり、南側には獅子峰の雄大な岩稜線、西側には天皇峰に続くとげとげした岩が並んで迎えてくれる。奇岩がパノラマのような月出山の景色を一望できるのだ。

 クァンアムトから天皇峰までは険しい絶壁と岩の峰を囲みながら再び上がらなければならない。通天門を過ぎ、短い下り坂と上り坂を経ると頂上だ。月出山の頂上である天皇峰は広い岩盤地帯だ。そこに上がると四方八方に景色が広がる。霊岩郡、康津郡周辺の山脈や平野が一望できる。東側にはファルソン山の風力発電機、西側には曲がりくねった霊岩湖の水路の一部が目に入る。遠くに見える景観も美しいが、真下に広がる険しい山裾と岩峰も美しい。多くの詩人が残したように、ここでは誰もが詩人になり、哲学者になる。そしてペンで、筆で、月出山の荘厳さを詠み、描くのだ。


月出山登り
月出山登り




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