国民年金制度を巡る議論が続いている(コラージュ)=(聯合ニュース)
国民年金制度を巡る議論が続いている(コラージュ)=(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】韓国で先ごろ発表された国民年金制度発展委員会の政策諮問案に関して、国民年金の長期持続可能性を高め、老後所得の保障機能を強化するために保険料や加入対象年齢を引き上げる案が盛り込まれたことが波紋を呼んでいる。 若年層を中心に、「このまま死ぬまで保険料だけ払い、後で受け取れないのではないか」と心配する声から「これまでに払った金額を返還して廃止せよ」との極端な声まで上がるなど、世論の反発が強まっている。 また、青瓦台(大統領府)ホームページの国民請願掲示板には国民年金の廃止を求める請願が続々と寄せられ、政府を困惑させている。 1988年に導入され、今年で30年を迎えた国民年金制度をなくすことは果たして可能だろうか。 保健福祉部と国民年金公団によると、国民年金の廃止は、手続き上は国民の合意を経て国会で国民年金制度の法的根拠となる国民年金法をなくせば可能だ。 だが現実的、実質的に国民年金の廃止は不可能だというのが専門家らの見解だ。「世代間、世代内の連帯」という社会保険の運営原理とは無関係に、経済的なことだけを考えても清算費用が維持費用をはるかに上回るためだ。 国民年金をなくしたとしても、国民はさらに大きな租税負担を負う可能性があるという指摘も出ている。 国民年金に加入して誠実に保険料を納め、最小加入期間の10年を満たせば、老後に年金受給権が与えられる。今年5月末現在の国民年金受給者は、447万877人(男性258万4896人、女性188万5981人)に上る。 受給者が確保した年金給与請求権は、正当な既得権として法的保護を受ける。憲法の遡及立法禁止の原則により、年金受給権は財産権に該当するためだ。 すなわち、国民年金制度を廃止したとしても受給者が死亡するまでは年金を支給しなければならず、もし基金が不足すれば税金を調達してでも支給する義務がある。 5月末現在の国民年金積立基金の規模は、634億ウォン(約62億4000万円)に上る。しかしこの莫大な金額をはたいて支給しても、年金支給額に充てるには厳しいというのが専門家らの分析だ。 国が存立する限り永続的に運営される公的年金である国民年金に当てはめるには適当でないとされるが、納税者連盟の推算結果によると2017年末現在、受給者と加入者に支給しなければならない国民年金の充当負債(責任準備金)は1242兆ウォンだ。 一方、現在の積立基金は半分の621兆ウォンで、未積立負債(潜在負債)は621兆ウォンに達する。これは未来の世代が税金などで負担しなければならない借金に当たる。 これとは別に国民年金を廃止し、既存の受給者と加入者にこれまでに徴収した金額を支給するためには、現在金融市場に投資している数百兆ウォンを取り崩さなければならない点も大きな問題とされる。 もしこの過程で国民年金が金融資産を一度に現金化しようとすると、国内外の株式と債券、代替投資市場は崩壊の危機に直面し、大混乱に陥りかねない。 国民年金は韓国株式市場でサムスン電子の9.67%、現代自動車の8.44%、SKの9.20%の株式を保有するなど、国内主要企業の大株主として影響力を行使している。このような状況で株式を処分した場合、株価の暴落は避けられず、韓国金融市場が崩壊する恐れがある。 基金運営本部は現在、国民年金基金の安定的な成果向上とリスク分散のために投資ポートフォリオの多角化を推進し、国内外の債券と株式、不動産などに分散投資している。 5月現在、投資部門と比重は国内株式130兆ウォン(20.5%)、海外株式114兆ウォン(18.0%)、国内債券295兆ウォン(46.5%)、海外債券23兆8000億ウォン(3.8%)、代替投資67兆3000億ウォン(10.6%)、その他部門1兆ウォン(0.2%)だ。 基金のうち、現金資産に当たる短期資金は2兆2000億ウォン(0.4%)に過ぎない。 国民年金基金は制度が導入された88年に5300億ウォンで開始され、03年に100兆ウォンを突破。今年5月末現在で634兆ウォンになった。 韓国の国金年金は、日本の国民年金基金、ノルウェーの政府系ファンドとともに世界3大年金基金に数えられるほど巨大な基金を運用している。 先日公開された第4回財政再計算の結果、国民年金の積立基金は41年の1778兆ウォンがピークとなるとの見通しが示され、国内総生産(GDP)比の積立基金の比率は、34年に48.2%まで増加した後に減少すると推計された。 国民年金公団の金成柱(キム・ソンジュ)理事長は「一部で国民年金を廃止して各自が老後に備えようとの主張もあるが、これは社会的にも国民個人的にも非常に危険な発想だ」と指摘した。 統計庁の17年の社会調査結果によると、韓国国民の62.1%が国民年金などの公的年金で老後に備えており、私的年金による老後準備は9.8%にとどまった。 金理事長はこのような現実に対し「万一国民年金なしに各自が老後準備をするなら、ほとんどの人が未来の老後生活の準備がおろそかになるしかなく、その負担はそのまま国家が責任を負うしかなくなる」と警告した。 また「国民年金が廃止されれば、経済協力開発機構(OECD)最高水準の老人の貧困率がさらに悪化し、社会不安が高まる」とし、「国民年金は政府が責任を持って年金基金を保障するため、基金が底をついたとしても必ず支給される」と強調した。 国民年金制度発展委員会の委員長を務める金尚均(キム・サンギュン)ソウル大名誉教授(社会福祉学)は、あるメディアとのインタビューで「一生国民年金なしに生きられる人は最大30%に過ぎない」とし、「国民年金ほどの制度を持つ国はないのだから大切に育てるべきで、廃止するのは反福祉だ」と述べた。
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