5年9か月ぶりの低水準を記録したウォンの対ドル相場=(聯合ニュース)
5年9か月ぶりの低水準を記録したウォンの対ドル相場=(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】韓国経済の柱である輸出と内需に対する懸念が広がっている。
 為替相場が6年ぶりとなる「1ドル=100円=1000ウォン」に近づいており、輸出の最前線はウォン高による打撃を警戒している。本来ならウォン高が好材料になるはずの内需も、韓国旅客船事故による自粛ムードで消費者心理が冷え込んでいる。

◇1ドル=1000ウォン割れ間近か
 ウォンの対ドル相場は、前月9日に心理的な支持線とみられていた1ドル=1050ウォンを抜け、1か月後の今月7日には1030ウォンも割り込んだ。市場では1000ウォンを次の目安とするが、ドルの流入が続き、1000ウォン割れの可能性が高まっている。その場合、2008年7月11日以来のウォン高水準となる。
 韓国経済学会のキム・ジョンシク会長は8日、「経常収支の黒字規模をみると、年内に3桁までウォン高が急速に進む可能性がある」との見方を示した。韓国の経常黒字は昨年800億ドル(約8兆1500億円)に迫り、過去最大を更新した。国内総生産(GDP)の6.1%だ。今年も黒字基調は続いている。
 それでも政府がウォン高を止めるため介入する余地は大きくないというのが大方の分析だ。
◇対円もウォン高進む
 今の為替相場は、企業が内部で想定する損益分岐点を下回る水準だ。特に為替変動に左右されやすい中小企業を苦しめている。
 企業銀行が先月半ばに中小企業105社を対象に調査したところ、1ドル=1030ウォンを心理的な支持線とする企業が40.8%を占めた。これら企業の損益分岐点となる為替相場は平均1052.8ウォンと集計された。これよりウォン高なら採算性が悪化し、損失を計上することになる。
 アジア金融学会の呉正根(オ・ジョングン)会長は「サムスン電子と現代自動車を除くと、昨年7~9月期から輸出企業の赤字が膨らんでいる。ウォン高で製造業が空洞化する恐れがある」と懸念を示した。
 対ドルに伴い対円相場もウォン高となっており、主に日本企業と競合する韓国企業が劣勢に立たされかねないと指摘される。昨年末の円安以降、ウォン高が進み、最近のウォン・円の裁定相場は100円=1000ウォンに迫っている。
 韓国銀行(中央銀行)は先月末の金融安定報告書で、100円=800ウォンまでウォン高が進行すれば、企業の売上高営業利益率は昨年末に比べ0.35ポイント低下すると分析した。
 一方で、「対ドル、対円相場と輸出の相関関係は弱まっている」 とし、輸出への打撃は限定的とする専門家もいる。
◇旅客船事故の内需への影響は
 一般的にウォン高は輸出に悪材料だが、輸入物価が下がるため内需には好材料とされる。しかし、旅客船セウォル号の沈没事故で韓国全体が重苦しい雰囲気に包まれており、ウォン高を機にした内需活性化をめぐってはさまざまな意見が飛び交う。
 アジア金融学会の呉会長は「内需は投資と消費の二つの軸からなる。韓国の内需構造は輸出企業の投資が鍵」とし、ウォン高が内需に肯定的とばかりはいえないと説明する。
 一方、韓国政府は旅客船事故の犠牲者を悼む雰囲気で消費が大きく落ち込んでいると判断。9日に朴槿恵(パク・クネ)大統領の主宰で緊急対策会議を開くことにした。
 事故直後から現在まで、クレジットカードの使用が低調で、百貨店など小売店の売上高も著しく減少している。団体旅行の取り消しも相次ぐ。
 ただ、これに対し崇実大の温基云(オン・ギウン)教授(経済学)は「旅行や観光、外食などはマイナスとなるだろうが、全体の民間消費に占める割合は大きくない」との見方を示している。

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